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2023.12.01

  • 最新研究
  • 上田 昌史

利用者利便性向上に向けたDXの深化と公的DPF設計の課題

 昨年度の年間テーマ研究「DX 阻害要因の検討と今後のデジタルプラットフォーム(DPF)への展望」の結果として、国内のDX 進展には、「レガシーの存在」や「横のシステム間連携」等の困難さが確認された。本報告書では、「利用者利便性向上に向けたDX の深化と公的DPF 設計の課題」と題し、各国の電子政府の現状と課題を調査した。特に、我が国同様、レガシーシステムが使われてきた欧州における電子政府の動向を調査し、その他事例とともに、我が国の次世代公的プラットフォーム構築に資する示唆も得た。
 調査方法としては、文献調査に加え、国内外の有識者へのインタビュー調査を行った。まず、我が国の電子政府の現状と課題を抽出し、各国事例からその課題のヒントを探るため、文献調査や国内実務家へのインタビューを行った。
 我が国の課題としては、実務家インタビューから、調達制度や検収、担当者の知識、ベンダーや自治体とのコミュニケーション不足等の課題が指摘された。
 欧州での調査では、eIDAS での強制的な実施といった外圧に加え、各国で独自に進めていたデジタル化への取組みが電子政府を促進した。また、ドイツやデンマークで指摘されたとおり、デジタルファーストのコンセンサスやデジタル化推進の政治合意は立法や運用に大きな助けとなっている。
 一方で、eIDAS 基準の柔軟さの欠如、信頼性評価の欠如、従来からの官僚制、国際連携、コミュニケーションギャップの存在等が阻害要因となっている。
 そういった課題への対応としては、開発や運用へのガイドライン充実、モバイル・ポータルへの取組み、コミュニケーションギャップを埋める制度の導入等が図られている。
今後の残された課題としては、より柔軟で⺠間も使いやすい制度への変更、国際連携の推進等が挙げられていた。
 これを受けて、我が国にも生かせそうな提言として、制度改革の提言とサービス設計の方針に関する提言を行った。
 具体的には、① 利便性向上と提供品質向上を目指して、システム調達の改善やシステム間連携を推進できる仕組みを導入すべき、②統一的なモバイルアプリや政府ポータルに公的サービスを集約したり、再入力不要な連携範囲を拡大したりするなどして、利用者の利便性を向上すべき、といったものである。
 
(執筆者)
上田昌史 (ICT リサーチ&コンサルティング部 シニア・リサーチャー)
 
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