本報告書では、我が国におけるDXの現状についてインタビュー調査等で調査し、その促進要因や阻害要因を整理する。そのうえで、今後のDXの深化にむけて必要になる「横のシステム間連携」の課題を考察する。
日本のDXについて、情報化投資の累積は大きいのに、DXについては悩んでいる企業や業種がある。また、個別には上手く取り組んでいるケースもある。
DXに成功したとされる事例を通信事業者、ソフトウエア事業者、電設企業の3例から、加えて、我々の生活に影響の大きい分野(業種)である公共機関、金融機関、医療機関等の個別分野(業種)についてインタビュー調査し、分析を行った。
これらのインタビュー調査の結果をまとめると、DXの促進要因については以下のように整理できる。
- 以前から準備していた企業では、目標が明確でコロナ禍でDXがさらに進展
- 社長(経営幹部)の姿勢が、役員や管理職の働き方に大きな影響
- 移行過程では、合意形成やコミュニケーションを重視
- DXが目的ではなく、組織に内在する業務改善等の「明確な目標」を実現するために、デジタルをツールとして活用し、DXを実現
また、DXの阻害要因については以下のように整理できる。
- 公共、医療、金融等の分野では、柔軟に変更が効かないシステムやクローズドなシステムがDXを阻害
- 規模の大小や経営状況の異なる主体間に合意形成に時間と手間が必要
- 利用者の利便性向上には、業界間・官民間等での安全なデータ相互利用の必要性
- 超えるべきハードルとして、「横のシステム間連携」
しかし、利用者の利便性向上のためには、業界間・官民間等での安全なデータ相互利用の必要であり、今後の課題としては、超えるべきハードルとして、「横のシステム間連携」があると考えられる。
現在進行中の新たな公共デジタルプラットフォーム(DPF)形成には、その多くが横のシステム間連携を想定しているため、今回調査で検討したように、今後の地域システム間連携や官民連携に大きな影響がある。
本調査の示唆としては、その検討にあたっては、留意すべき点は、柔軟性のなさと閉鎖性をいかに回避するかである。
(執筆者)
上田昌史 (ICTリサーチ&コンサルティング部 シニアリサーチャー)