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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
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2011.10.01

  • 最新研究
  • 木賊 智昭

諸外国におけるグリーンICTの動向

 本報告書は、低炭素社会実現へ向けた各国の経済基盤の転換を踏まえ、CO2排出量削減等の環境問題対策に情報通信技術(ICT)を活用する「グリーンICT」の海外動向を、政策事例、国際協力の現状、ICT関連企業のサービスや取り組み事例の情報を収集・分析し、政策面・ビジネス面の特徴を明らかにすると共に、今後の課題やビジネスのあり方に展望を得ることに努めている。
 第1章では、グリーンICTに関する基本的事項を確認している。まず欧米・アジア各国における「環境産業」の創出とグリーン技術のイノベーションのための支援を骨子とする「グリーン・ニューディール政策」を取り上げ、グリーン産業が新しい市場として今後の成長が期待されていることを確認している。また、グリーン技術としてICTがもたらす効果にはどのようなものがあるのかを明らかにすると共に、その効果に関する定量的評価について動向を把握し、ICT活用の意義を確認している。
 第2章では、各国で実施されているグリーンICT政策の内容を検討すると共に、ITUを中心にグリーンICTの標準化の動向を取り上げている。EU、英国、フランス、ドイツ、デンマーク、米国など各国グリーンICT政策を、①R&D・イノベーションの促進・支援、②グリーンICT設備・ICTアプリケーションの普及促進、③グリーンICT関連の技能習得支援・啓発に分類し、グリーンICT専門家育成の必要などの課題を明らかにしている。また、標準化作業では、グリーンICTの効果に関する評価手法を中心に、ITUの標準化動向を調査している。そのほか、欧米アジアの各地域に所在する公共・民間の団体による標準化活動を概観する。
 第3章では、通信キャリアを中心に、AT&T、Verizon、Sprint、BT、ドイツ・テレコム、フランス・テレコム、Vodafone、グーグルのグリーン関連ビジネス・取組み事例を取り上げている。各企業の取組み事例としては、再生可能エネルギー、データセンター省電力、グリーン・ソリューション・サービス提供、移動代替・物質代替となる通信サービスの活用、設備・端末リサイクル、電気自動車・代替燃料の利用、グリーン調達、社員とのグリーン協定社外啓発活動、ハイレベルのCSR専担部署の設置などが実施されている。
 各企業の事業戦略面からは、エンドユーザ向けサービスとして、Web会議等の「従来型サービス」及び顧客ニーズに従ってソリューションを提供する「付加価値型サービス」などが提供されている。また、将来の電力戦略から、再生エネルギー導入やデータセンターのエネルギー効率向上への取組みが顕著に見られる。そのほかの企業の社内のグリーン化の取組み(設備・端末のリサイクル、電気自動車、グリーン調達、啓発活動等)は、企業の社会的責任(CSR)の活動の一環として実施されており、企業シチズンシップの遂行が企業行動の規範に深く浸透していること指摘している。
 また、本報告書では、エネルギー利用の効率化に対してICTが貢献する分野として、スマートグリッドも取り上げ、ICT企業にとって期待されるビジネス機会の所在を検討している。
 本調査のまとめとなる第4章では、低炭素社会の実現へ向けたグリーン化への志向が、政府・企業・個人に広く浸透しつつある中で、ICT企業のグリーン・サービス及び社内取組みの意義を、収益性確保とSCR等の企業活動の観点から総括している。
 収益性の面では、通信キャリアが提供するグリーンICTサービス需要は、エンドユーザ側のグリーン化への取組みの進展により後押されることが見込まれる。再生可能エネルギー導入は、化石燃料依存からの脱却というグリーン戦略のほか、ICT企業の電力戦略の一環とも位置付けられるところから、今後の重点戦略の一つとなる。
 これらの事業強化以外ではICT企業の社内のグリーン化の取組みの多くはCSRの一環として位置付けられる。CSRは既に企業評価の基準として浸透しつつあり、企業ブランド力の強化につながるほか、社員の志気の向上、優秀な人材確保の機会拡大などの付加的効果を生み出すことが期待される。
 スマートグリッドは、新しいM2M市場を生み出しているおり、大容量データ通信に応えるために、無線ブローバンド技術・サービスの開発が、新市場のシェア獲得のポイントになる。また、スマートグリッドの技術的な裾野は広く、ステークホルダーが複雑なため、ICT企業と、電力業界、AMI(スマートメーター)製造業者、ネット家電業者などの他業界との協力・連携のあり方が今後注目される。
 今後の課題としては、グリーンICTの標準化が挙げられる。ICTの評価手法、スマートメーター/AMIの標準統一が課題となっており、日本が、グリーンICT分野での国際競争力の強化に向けて、これらの標準化に、どのような影響力を持つか注目される。
 総じて、グリーン化を基盤に、ICT企業は収益性の確保と公益性の確保の両立が必要となっており、従来の収益の極大化の企業論理から、収益性と公共性の二つの目標の最適化のための戦略が、今後、企業に求められつつあることを指摘している。

■目次
はじめに
第1章 諸外国におけるグリーン・ニューディール政策とICTの役割
1-1 各国のグリーン・ニューディール政策概要
1-1-1 グリーン・ニューディール推進の背景
1-1-2 各国グリーン化政策概要
1-2 グリーン化(低炭素化)に果たすICTの役割
1-2-1 ICTを活用したグリーン化
1-2-2 ICT分野自体のグリーン化
1-2-3 ICTによるグリーン化の効果
第2章 グリーンICTに関する各国政策と標準化の動向
2-1 海外各国におけるグリーンICT政策動向
2-1-1 グリーンICTに関連する施策項目
2-1-2 欧州におけるグリーンICT政策
2-1-3 米国におけるグリーンICT政策
2-1-4 各国のグリーンICT政策の特徴
2-2 グリーンICTの標準化動向
2-2-1 ITU
2-2-2 欧州における活動
第3章 諸外国におけるグリーンICTをめぐる企業動向
3-1 ICT企業のグリーン化への取組み状況
3-1-1 ベライゾン
3-1-2 AT&T
3-1-3 スプリント
3-1-4 BT
3-1-5 フランス・テレコム(FT)
3-1-6 ドイツ・テレコム
3-1-7 ボーダフォン
3-1-8 グーグル
3-1-9 スマートフォンによるグリーン・アプリの提供
3-1-10 グリーン化へ向けたICT企業の取り組みの特徴
3-2 各国スマートグリッド計画におけるICT活用事例
3-2-1 スマートグリッドにおけるICTの概要
3-2-2 各国スマートグリッド計画概要
3-2-3 スマートグリッド事業のビジネス機会
第4章 まとめ-各国比較と今後の展望
【参考資料-スマートグリッド・プロジェクトのリスト】

■執筆者一覧
木賊 智昭 電波利用調査部 副主席研究員