欧州委員会は10月8日、AIを欧州の産業と科学研究へ導入する二つのAI戦略を公表した。両戦略、今年4月に公表されたEUをAI分野での最先端にする「AI大陸行動計画」を補完するものとなっている。
一つ目の「Apply AI戦略(Apply AI Strategy)」は、10の主要産業及び公共セクタにおけるAI利用を促進するもので、ホライゾン・ヨーロッパ等のR&D支援プログラムから約10億EURを動員する。合わせて、新たなガバナンス体制も構築するとし、産官学民連携の場となる「Apply AI同盟(Apply AI Alliance)」、AIトレンドの監視及びセクタ別の影響を評価する「AIオブザーバトリー(AI Observatory)」を設置する。主な取り組みは以下のとおりである。
- インフラ、データ、試験施設を連携させることで市場投入までの時間短縮
- EUの労働力を強化し、あらゆる分野でAI対応を可能に
- フロンティアAI開発を促進させる「フロンティアAIイニシアチブ」の立ち上げ
- 公共セクタ及び10のセクタ別旗艦プロジェクトの実施
- AI開発・導入における横断的課題への対応を通じ、EUの技術的主権強化に向けた支援策と行動を推進
- AI対応人材の育成
二つ目の「科学分野におけるAI戦略(AI in Science Strategy)」は、AI主導型の研究とイノベーションの促進を目指すもので、主な取り組みは以下のとおりである。
- AIリソースを集約・調整する仮想の研究所となる「RAISE(Resource for AI Science in Europe)」の設置
- 世界の科学人材と高度なスキルを持つ専門家の誘致施策
- ホライズン・ヨーロッパから6億EURを拠出し、EUの研究者やスタートアップがAIギガファクトリーを利用可能に
- ホライズン・ヨーロッパのAI年間投資額を30億EUR超へ倍増
- *科学分野のAIに必要なデータセットを収集・整理・統合するための支援
また、欧州委員会は、AI大陸行動計画で提言されていた、企業によるAI規則の順守を支援する「AI規則サービスデスク」を立ち上げたとしている。