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2020.10.01

  • 最新研究
  • 五十嵐 輝
  • 小山 友介

日本におけるeスポーツの現状分析―「Media Entertainment」へと発展するeスポーツ

 日本のeスポーツ市場は2018年を境に大きく盛り上がりを見せて来ている。しかし、海外との人気ゲームタイトルの違いや法的問題などにより、eスポーツ市場の規模は未だ小さく、その拡大に向けた方策が課題となっている。本研究では、法的問題にかかる整備等が進み、中心的存在となる第三者機関の設立及び競技環境の整備によるプロ化の伸展という意味での「Sport」の波が来た日本のeスポーツが、動画共有プラットフォームでの視聴を中心とする「Media Entertainment」へ発展するのか、またそのために採り得る施策はどのようなものかを明らかにする。

 第1章では、本研究が扱う「eスポーツ」の定義を定めるところから始め、世界と日本のeスポーツ市場の動向を紹介し、T.L.Taylor(2018)が提示する海外で進むeスポーツにおける3つの波である1st「Game」、2nd「Sport」、3rd「Media Entertainment」を説明する。これを受け、日本eスポーツの課題であるゲーム市場の問題と法的問題を提示し、この問題がどこまで解決してきたのか整理しする。そして、日本のeスポーツが、さらに成長していくために取り得る施策を明らかにするということが、本研究の調査目的であることを説明する。

 第2章では、eスポーツを先導する主要国の発展経緯について整理する。特にボトムアップ型の米国・欧州とトップダウン型の韓国・中国を対比させつつまとめた。「Media Entertainment」へと各国が進んでいく中で起こった失敗と、それを乗り越えた背景には、eスポーツの放送を行う「動画共有プラットフォーム」とゲームデベロッパーによるeスポーツの推進があったことを詳述している。

 第3章では、日本の発展経緯と課題について整理している。日本の問題は、大きくゲーム市場の問題(特に海外との人気ゲームタイトルの違い)と法的問題(特に景表法にかかる高額賞金問題)に分かれているということと、さらにそれを解決できなった組織的な機能不全の問題についてまとめた。2018年に国内の統一団体である日本eスポーツ連合(JeSU)が設立されたことを契機に、第三者機関の設立、及び法的問題のうち、景表法にかかる高額賞金問題が解決に向かい、競技環境の整備が進展したことから、現在の日本の位置は「Sport」であると提示した。そして、「Media Entertainment」へと向かう上で、市場の問題からくる視聴者人口の少なさが大きな課題であることを示した。

 第4章では、本研究の目的である「Media Entertainment」へ進むための施策提言に向け、eスポーツのより詳細な視聴状況を把握することを目的に、国内を対象にアンケート調査を行った。結果、視聴の面からも今後のeスポーツの拡大は確実であり、若年層を中心に海外ゲーム企業開発のeスポーツタイトルが視聴されていることから、ゲームタイトルについても海外市場との差は縮んでいくと考えられる。しかし、これは日本のゲームデベロッパーが若年層の需要を掴めるタイトルを打ち出せない場合には、eスポーツ市場を奪われてしまう可能性を示唆しているとも言える。

 第5章では、第2章~第4章の調査結果を元に、本研究の結論をまとめるとともに、「Media Entertainment」へ発展するために採り得る施策は提示している。

(執筆者)
五十嵐 輝 (ICTリサーチ&コンサルティング部 リサーチャー) 執筆
小山 友介 (芝浦工業大学 システム理工学部 教授) 監修