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2025.10.15

  • ICTワールドニュース
  • 英国

【英国】政府、スマホアプリによる新たなデジタルID制度を導入

政府は、スマートフォンアプリを基盤とする「デジタルID制度」の導入を発表した。無料で提供され、氏名、生年月日、国籍または在留資格、顔写真などの基本情報を含む。英国で合法的に就労する全ての個人にとって「Right to Work(働く権利)」を証明する唯一の手段として義務付けられる。雇用主はこのIDを用いて就労資格を確認する義務を負うことになり、不法滞在者の雇用を防ぐ狙いもある。制度設計や運用方針としては、1)ICカードではなくスマートフォンベース(個人情報はスマートフォンに保存され、本人の意思で情報を共有する設計(非接触決済カードやNHSアプリと同様)。更新が容易)、2)申請制・有料発行ではなく無料(すべての英国市民および合法的居住者が対象)、3)行政手続きだけではなく民間でも利用可能(就労資格確認、福祉申請、選挙、銀行口座開設、年齢確認等)の特徴を持つ。さらに、障がい者向けにスクリーンリーダー、音声コマンド、生体認証機能を持たせるとともに、スマートフォンを持たない人向けに物理的な代替手段や、対面支援、個別対応も検討されている。

英国ではこれまで身分証明の義務化制度が導入されておらず、現状として国民の中央登録簿は管理されていない。2011年には当時の保守党主導の連立政権下で、ブレア労働党政権時代に提出されたICカードベースの国民ID義務化法案が破棄された。スターマー政権は本制度を、不法就労の移民問題対策であり、行政サービスのDX促進策と位置付け、より多くの人々に公平なサービス提供を可能にするとしている。プライバシー問題への懸念に対しては、不必要な個人情報の共有制限と、最先端の暗号化とユーザ認証の使用により、データの安全な保持とアクセスが実現するとしている。「2025年データ(利用とアクセス)法」の成立により、本制度が法制化されたもので、信頼性の高い運用の実現が期待されている。

国民デジタルIDは別名「ブリットカード(BritCard)」とも呼称され、本制度への反対意見としては各所から、「監視社会」への懸念、不法移民対策としての実効性への疑問、情報漏洩・セキュリティリスクへの懸念、デジタル排除の問題等が指摘されており、反対するオンライン署名は2025年10月8日時点で280万超となっている。本制度は議会任期中に全国展開される計画で、現在、国際的な事例を参考にしつつ、セキュリティとプライバシー保護を重視した技術仕様を策定中である。政府は年内に公開協議を実施し、制度の公平性と実効性を高めるための意見を広く募る方針である。

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