欧州委員会は2030年までの欧州デジタル社会化計画「2030 Digital Decade」の中間報告を公表した。この報告では、加盟各国が2023年に承認したロードマップに従って開始したデジタル化政策は合計で約1.910件、関連費用の算定額は2,886億EURに上るとしているが、なお以下の課題が残り、より一層の投資、関連機構の構造改革、域内企業への各種認可手続きの簡略化が求められるとしている。
- 5Gスタンドアロンや光ファイバ網などの超高速接続サービス基盤の整備が遅れがちであり、海底ケーブルや衛星等、国際通信基盤にはセキュリティが危ぶまれる箇所がある。
- 企業のクラウド・AI導入は進んでいるが、サービスの依頼先はEU外が中心であり、半導体や量子インフラの素材も外国頼みである。
- EU人口の約56%は基本デジタルスキルを有しているが、専門人材がまだ不足している。
- 公的サービスのオンライン化は進んだが、サービス基盤が外国頼みである。
- 恒久的かつ安全なエネルギーの供給元が確定されていない。
- AI、半導体、量子コンピュータ等、軍事と民間の双方で共用可能な技術分野での協力関係が確立していない。
- 偽情報や未成年保護等、一般の懸念が強い問題への統一的対応体制が整備されていない。
EUジョイントリサーチセンターの調査では、2021~2027年の各国のデジタル化予算にはかなりばらつきがあり、イタリア、スペイン、ギリシャが一人当たり700EURを超えているのに対し、デンマークやアイルランドは100EUR程度であった。既にデジタルサービスが整備されている国では予算額が少なくなる傾向はあるにせよ、センターの推計では、各国が「2030 Digital Decade」の目標を達成するには、平均してデジタル化にかける費用を20%増加させる必要があるとしている。