連邦議会下院は5月22日、「大きく美しい一つの法案(One Big Beautiful Bill Act)」
と呼ばれる予算調整法案を賛成215、反対214、棄権1の僅差で可決した。争点の一つとなったのは、州・自治体によるAI規制を10年間禁止する条項。採決前日に開催された下院エネルギー商業・委員会商業・製造・貿易小委員会の公聴会では、州法による過剰規制やパッチワーク型規制は米国AI産業の国際競争力を阻害するとして同条項を支持する共和党議員と、連邦レベルで十分な法整備がなされるまで州レベルの規制は禁止すべきでないとする民主党議員とが衝突した。他方で、6月3日には、全米50州の超党派州議会議員260名が連邦議会に書簡を送付し、法案から条項を削除することを求めた。州議会議員らは、州レベルのAI規制を10年間禁止すれば、急速に進化するAIリスクから市民を守ることができなくなると指摘。州議会は連邦議会と比べ新たな問題に迅速に対応可能で、その対応はより良い連邦法の基盤にもなると主張している。トランプ大統領は7月4日の独立記念日までの法案成立を目指しているが、連邦議会上院における審議では、民主党が「バード規則(注)」に基づいて同条項の除外を図ると見られ、予算調整法案と同条項の関係性が審議の焦点になることが予想される。
(注)バード規則(Byrd Rule)とは、予算調整法案の趣旨と関係のない事項を法案から除外可能とする規則。「1974年予算法」第313条に規定されている。
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