トランプ大統領は5月13日から16日にかけて、政権復帰後初の実質的な外遊として中東湾岸諸国を訪問し、AIを含む新興技術分野で巨額契約を取り付けた。13日に訪問したサウジアラビアでは、事実上の最高権力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子と戦略経済協定に署名したほか、両国企業による6,000億ドル規模の投資計画を発表した。また、15日に訪問したUAEでは、ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領大統領と会談し、2,000億ドル以上の商業契約を獲得したほか、AI分野での協力強化でも合意した。各国での主な合意内容は以下のとおり。
<サウジアラビア>
- 米半導体NVIDIAがサウジ政府系ファンド傘下のAI新興企業ヒューメインにAI向け次世代チップ「ブラックウェル」を1万8,000基提供する。
- 米半導体大手AMDとヒューメインがAIインフラ構築に最大100億ドルを投じる。
- 米クラウド大手AWSとヒューメインがサウジアラビアでのAIゾーン建設に50億ドル超を投じる。
- 米グーグル、米セールスフォース、米オラクル、米Uber、AMD、サウジのデータインフラ大手データボルトが両国での技術開発に800億ドルを投じる。
<UAE>
- UAE政府系企業G42が主導し、複数の米国企業が参画する形で、アブダビに世界最大規模となるAIキャンパスを共同建設する。
- 両国政府が「US-UAE AI促進パートナーシップ(US-UAE AI Acceleration Partnership)」の枠組み設置で合意。
今回の中東外遊には、脱石油改革を目指す湾岸諸国から対米投資を引き出す狙いがあったとみられる。ただし、民主党からは安全保障上のリスクを懸念する声も上がっている。5月19日にはチャック・シューマー院内総務やエリザベス・ウォーレン議員をはじめとする民主党上院議員グループが、ハワード・ラトニック商務長官とマルコ・ルビオ国務長官に書簡を送付し、サウジ・UAE両国とのAI合意を再考するよう求めた。議員グループは、NVIDIAやAMDの最先端AIチップが両国に大量輸出されることで、チップが中国やロシアの手にわたる恐れがあるほか、米国企業が利用できるチップが制限される可能性もあるとして、両国との取引について十分な安全策を講じることを呼びかけた。
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