欧州委員会は、1月29日、戦略枠組み「競争コンパス」を公表した。競争力コンパスは、2024年12月に発足した第二次フォン・デア・ライエン政権による最初の主要イニシアチブとして提示されたもので、EUの競争力向上に関する提言をまとめたドラギ氏の報告書(通称「ドラギレポート」)を土台とし、ロードマップを示した。
三つの主要アクションとして、①イノベーションギャップを埋めること、②脱炭素化と競争力のための共同ロードマップ及び③過剰な依存の削減と安全保障の強化(注:サプライチェーンの多様化と強化)を掲げた。①のイノベーションギャップについて、欧州委員会は、主要セクターにおけるAIの開発と産業導入を推進するために「AIギガファクトリー」と「応用AIイニシアチブ」を提案するとしたほか、先端材料、量子、バイオテクノロジー、ロボット工学及び宇宙技術に関する行動計画の提案や、「EUスタートアップ・スケールアップ戦略」の策定、また、手続きの簡素化・破産コスト削減の「28番目の法制度(28th legal regime)」の提案を行っていくとした。これら三つの主要アクションを補完する横断的な手段として、次の五つの事項が提示されている。
- 簡素化:規制・行政負担の大幅軽減を目指し、「オムニバス提案」による持続可能性、タクソノミー及びデューディリジェンスに係る報告義務の重複排除・簡素化を図る。企業の行政負担を少なくとも25%、中小企業については35%軽減する。
- 単一市場への障壁を低減:水平単一市場戦略により、ガバナンス枠組みの近代化、EU域内の障壁の撤廃・新たな障壁の創設防止に取り組む。
- 争力強化のための資金調達:「欧州貯蓄投資連合」を提案し、新たな貯蓄・投資の創出、リスク資本へのインセンティブ付与、EU域内でシームレスに流れる投資確保を目指す。
- 技能及び質の高い雇用の促進:欧州「技能連合」構築のためのイニシアチブを提示する。
- EU・加盟国間の政策調整の強化:「競争力調整ツール」の導入によりEU及び加盟国における共通の政策目標の実施を確保し、次期多年次財政枠組みで導入する「競争力強化基金」を通じて財政的支援を提供する。