連邦最高裁は6月24日、妊娠15週以降の人工妊娠中絶を禁止するミシシッピ州法の合憲性を巡る裁判の判決で、中絶を憲法上の権利と認めた1973年のロー対ウェイド事件最高裁判決を覆す判断を下した。これにより、中絶の是非は州政府に委ねられ、各州が中絶を禁止したり制限したりできるようになる。グットマッカー研究所によれば、南部や中西部を中心に26州が中絶を制限する州法を導入する見通し。長きにわたって米国を二分してきた中絶議論だが、11月の議会中間選挙でも大きな争点になることが予想され、更なる論争と政治対立を引き起こすとみられている。
ICT分野においては、中絶希望・実施者の個人情報をいかに保護するかに注目が集まる。中絶権を支持する民主党議員らは、中絶希望・実施者の位置情報を売買するデータブローカーの存在や、保守派検察官が中絶希望・実施者を取り締まるためにジオフェンス令状(法執行機関が事業者に対して時刻と場所を提示し位置情報データの提供を要請する令状)を発行する可能性を危惧。5月に判決原案がリークされて以降、連邦取引委員会(FTC)や大手テック企業に書簡を送付し働きかけている。
中絶議論に対し沈黙を守る企業が少なくないなか、アマゾンやメタ、マイクロソフト、コムキャスト、ディズニー、ネットフリックス、電気自動車大手テスラ等は中絶が合法な州で手術を受ける従業員に渡航費用を支給する方針を発表している。また、配車サービス大手ウーバーは、中絶希望者を医療機関に運ぶドライバーが被りかねない訴訟費用を負担することを宣言した。
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