情報技術・イノベーション財団(ITIF)は9月28日、トランプ大統領と民主党大統領候補であるジョー・バイデン前副大統領のテクノロジーやイノベーション問題に対する政策の違いを比較した報告書を発表した。具体的には、「イノベーション/研究開発」「インターネットとデジタル経済」「ブロードバンドと電気通信」「教育と技能」「税金」「規制」「貿易」「高度製造」「生命科学」「クリーンエネルギー」の10の領域について両候補を比較したところ、連邦政府の役割などに大きな違いが見られた。
総論としては、トランプ大統領は、減税や規制緩和等で政府による技術やイノベーションの障壁をなくすというアプローチを取っているが、特定の技術を除き、研究開発に対する連邦支出額を減少させている。一方、バイデン候補の経済計画は、研究開発や高度製造への投資を大幅に増額することを提案する他、医療や物理的なインフラへの投資に政府がこれまでよりも大きな役割を果たすべきとの考えを示している。
主な各論は以下のようにまとめられる。
*イノベーション/研究開発
トランプ大統領は、五つの「将来産業」(AI、量子コンピューティング/量子情報科学、5Gを含む先進通信、高度製造、バイオテクノロジー)に連邦政府の研究開発予算を増やす一方、全般的に研究開発予算を削減したり、研究開発成果を市場に還元したりする取組みを進めている。一方、バイデン候補は、5GやAIなどのブレークスルー技術を中心に4年間で3,000億ドルの研究開発予算投資を提案する他、マイノリティや女性支援を増やすべく、既存の中小企業のイノベーション支援プログラムを改めていくとしている。
*インターネットとデジタル経済
トランプ大統領が「クリーン・ネットワーク」イニシアティブを通じて機密情報が中国に蓄積されないようにする一方、バイデン候補側は民主党政策綱領で「オープンなインターネット」の原則に立ち戻るとしているが、大手インターネット・プラットフォーマーに対しては、両候補とも、通信品位法第230条による免責を制限し、より積極的に反トラスト法を執行すべきという立場をとっている。
*ブロードバンドと電気通信
5Gについて、トランプ大統領は「全国高速無線インターネット・ネットワーク」の構築を掲げ、バイデン候補は5Gを通じてブロードバンドを全ての米国民に拡張するとして、ともにルーラル・ブロードバンド・インフラ整備を支持している。その他、バイデン候補はトランプ政権で廃止されたネット中立性原則を復活すべきと主張している。
上記の他に、両候補の違いが顕著に現れているのは税金と規制で、バイデン候補は大企業に対する増額とプライバシーや反トラスト関連の規制強化を支持しているのに対して、トランプ大統領は従来の共和党の方針に沿って、規制緩和、法人税の減税、消費者利益の原則に基づく反トラスト法の執行を掲げている。また、通商政策については、両者とも中国に厳しく当たることとしているが、トランプ大統領が主に一方的なアプローチを好むのに対し、バイデン候補は多国間のアプローチを好んでいる。
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