日中韓の三国は同じく超高齢化社会到来に対する諸課題を抱えている。また、ICTインフラが整備されかつ高度なICT技術力を持つことでも共通している。これら三国では、今後ICT活用見守り系サービス活用(AI/IoT/ミリ波センサー等)と普及促進が課題となり、日本ではデジタル田園都市構想等で課題として取り組むが主にコストや自治体予算等で普及に課題がある。こうした背景を鑑み、本調査研究は、日本以上に今後急速に高齢化が進展する中国と韓国で進める見守り系ICT活用サービスの政策、サービス開発や導入状況等を調査し、三国の体制の違いを踏まえつつ課題を比較・整理したうえで日本への示唆を導出した。
三国の制度比較では、一人暮らし高齢者のICT活用見守りサービスは三国とも介護保険制度の対象外となっており、韓国では孤独死予防対策に政策重点を置きICT活用見守りサービスを積極的に導入・拡大し、中国はシルバー経済振興策でICT新技術活用の見守りサービスを積極的に開発・導入していることを明らかにしている。
また、見守りサービスの特徴として、日本と韓国ではカメラを使わないプライバシー配慮型のサービスが好まれること、韓国では通信事業者のAI・データ活用型サービスが主流であること、中国では通信事業者のAIやIoTを活用した定額利用のできるサービスが多数であること、日本では運輸・綜合警備事業者のサービス知名度が高く、IoTセンサー活用の中小事業者が多く存在していることが挙げられる。
中国・韓国における見守り系ICT活用サービスの政策・サービスの調査結果を踏まえた日本への示唆として、法制度の面では、「孤独・孤立対策推進法」等の対象範囲を孤独死予防まで拡大し、また見守り系ICT活用サービスを公的サービスとして提供するための法制度改正の検討の必要を示した。サービス面についても、現在日本で多くみられるIoT型の見守り系サービスから、中国・韓国で提供されている複数種のデータ(エネルギー・人感・通信等)の組み合わせサービスやAI活用サービスなど、サービス多様化を図ることが期待され、また、これらサービスを活用する際には、緊急時通報まで含め、プライバシーに十分配慮したサービス環境の整備が望ましいことを示した。
今後の展望として、中国・韓国においてAI、ロボット、ミリ波レーダー等を活用した見守り系サービスが更に拡充することが見込まれており、日本の民間企業・自治体が今後のサービス拡充を検討する上で有用な参考事例となる。また、日本ではサービス利用に補助のある自治体も一部あるが対象サービスが限定的であり、公的サービス化することで市場拡大に期待できる。
(報告書内容)
■日中韓市場の制度・サービス動向比較
■中国のICT活用在宅高齢者見守り政策・市場動向
■韓国のICT活用在宅高齢者見守り政策・市場動向
■まとめ(得られた知見/今後の課題)
(執筆者)
三澤 かおり(調査研究部 研究主幹)
裘 春暉(調査研究部 主席研究員)
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