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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
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2025.04.14

  • 最新研究
  • 藍沢 志津
  • 坂本 博史

オンライン安全法制の国際動向-英国、オーストラリアの事例を中心に-

 本報告では、オンラインの安全確保に向けた先進的な法制度として、英国の「2023年オンライン安全法」、オーストラリアの「2021年オンライン安全法」を取り上げ、両国のオンライン安全法制の内容・体制・影響・課題を抽出するとともに、両国が参加するオンライン安全規制当局による国際協力枠組「GOSRN」の取組みについて考察した。
 調査分析の結果、得られた知見として以下が指摘できる。
  • 英国の「2023年オンライン安全法」は子どもを保護する実践的措置の導入・遂行を義務付けており、オーストラリアの「2021年オンライン安全法」は既存のネットいじめ法制を改正した法律である。両法はともに、社会的事件を契機とした世論の高まりを背景に成立したもので、「オンライン上の子どもの保護」に焦点が当てられている。
  • 英国のOfcomによるオンライン安全規制はシステム及びプロセス・ベースのアプローチをとり、オーストラリアのeSafetyはコンテンツ・ベースとシステム及びプロセス・ベースのハイブリッド・アプローチをとっており、規制アプローチには違いがみられる。GOSRNに参加する国々は、人権、民主主義、法の支配等、同じ価値観を共有するとしつつも、それぞれの法制度、規制構造、社会状況を踏まえ、現時点ではそれぞれの規制には特徴がある。
  • 両法を巡っては「子どもの保護」と「表現の自由」及び「プライバシーの保護」を巡る議論が活発化したが、両国の産官学民の利害関係者が、両価値の比較衡量ではなく両立を目指し、現在もなお議論が続いている。
 調査分析の結果、今後の展望・課題と日本への示唆として以下が指摘できる。
  • 両法は以下の点から、日本を含め世界各国に影響を及ぼす可能性がある。1)両法に基づくオンライン安全規制が特に子どもの保護における実践的先進事例となること。2)英国の「2023年オンライン安全法」が英国外の企業にも適用される可能性があること。3)オーストラリアの「2021年オンライン安全法」は2021年に成立しており、比較的豊富な執行事例があること。4)「GOSRN」を通じて、人権、民主主義、法の支配を遵守する立場から、今後は、国際的オンライン安全規制の一定程度の共通アプローチが形成される可能性があること。
  • 現在、両国のオンライン安全法制においては、行動規範やガイダンス、関連法等の整備が進展中であり、両法を含むオンライン安全法制全体の枠組や内容をとらえることが重要である。
  • 今後、注目すべき点として、両法に基づく具体的な執行事例の他に、急速に進化するAI技術への対応、コンテンツのモニタリング、年齢確認の仕組み等、実践的・技術的な対策の導入動向が挙げられる。
(報告書内容)
■世界のオンライン安全法制を巡る動向
■英国の「2023年オンライン安全法」を巡る動向
■オーストラリアの「2021年オンライン安全法」を巡る動向
■オンライン規制当局による国際協力枠組「GOSRN」の動向
■参考資料
・英国とオーストラリアのオンライン安全法の比較等

(執筆者)
藍澤 志津 (調査研究部 主席研究員)
第1章、第2章、第4章、第5章担当
坂本 博史 (調査研究部 主任研究員)
第3章、第5章担当

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