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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
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2018.10.01

  • 最新研究
  • 藍沢 志津
  • 米谷 南海

公共放送のマルチプラットフォーム展開とローカルコンテンツ戦略

本研究では、「デジタルメディア時代を迎えた公共放送は、ローカルコミュニティ(地域社会)とどのように関わろうとしているか」との問題意識のもと、英国のBBC、カナダのCBC、オーストラリアABCとSBSという三か国の公共放送の事例を取り上げ、比較分析を実施した。

特に、カナダCBCの取組み事例から教示を受け、「公共放送は、モバイル活用を重視したマルチプラットフォーム展開を進めることで、ローカルコミュニティとの繋がりを深めようとしているのではないか」との仮説を検証することを試みた。

分析の結果、BBC、CBC、ABC・SBS はいずれも、近年のメディア環境・視聴行動の変化のなかで、マルチプラットフォーム展開と、ローカルコンテンツを重視する戦略を打ち出していることが明らかになった。それは、台頭する米国OTT-Vサービス事業者への対抗戦略でもあることが確認された。しかし、重視するプラットフォームと、「ローカル(地域)」の定義は、各公共放送により異なっており、どのプラットフォームを重視するかは、公共放送の予算・人員組織の規模により決定され、ローカルの定義、範囲、意義は、各公共放送が置かれた政治・経済・文化の状況により決定されると考えられる。

仮説に関しては、カナダCBCではモバイルを特に重視したローカルコンテンツ戦略を確認することができたが、英国BBCはローカルコンテンツの提供方法をモバイルに特化せず、従来のテレビやラジオの放送も同様に重視していた。オーストラリアABC・SBSに関しては、今後の動向を見ていく必要があると考える。

デジタルメディアは日々刻々と変化と発展を遂げつつあり、世界の公共放送はデジタル技術の活用により公共メディアへの転換を図るなかで、ローカルコミュティにおける役割を強化しようとしており、今後もこの動きは加速していくものと考えられる。

その一方で、昨今のメディア環境・市場構造の変化のなかで、特に米国OTT-Vサービス事業者の影響力は強く、公共放送は今後、多様なパートナーとの協業による事業展開(ローカルニュースメディアへの投資や提携、他の放送事業者との共同オンライン・プラットフォームの構築、米国OTT-Vサービス事業者(アマゾンやネットフリックス)とのドラマの共同制作等)を加速していくことも予想される。