[HTML]
H1

最新研究一覧

コンテンツ

一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
各報告書は、販売もしておりますので、ご希望の方はこちらにご連絡ください。
当財団の賛助会員(法人)の方には、これらの研究報告書を送付しています。

お知らせ年度表示
掲載年選択
お知らせ表示

2011.10.01

  • 最新研究
  • 平井 智尚
  • 鈴木 俊介

オンラインコミュニティの現状と、その可能性

本報告書は、国内及び海外におけるオンラインコミュニティサービスの現状を把握し、その構造と社会的機能を研究し、オンラインコミュニティが現実社会に与える影響について考察するものである。とりわけ、近年、非常に大きなムーブメントとなっているソーシャルメディア、ソーシャルネットワーキングサービスを、現代社会論的、あるいは社会学的立場から研究する。
 また、従来型の掲示板、チャット、ブログなどに加え、近年登場したメタバース、SNS、ミニブログなどの各種コミュニティサービスにおいて、そこで展開されているコミュニケーション、そこに参加している人々の属性などから、質的相違および文化的相違を比較検討するものである。またオンラインコミュニティにおける具体的、直接的な生産物としてCGM(Consumer Generated Media)における創作活動の現状と、その今後の可能性について検討するものである。
 インターネット黎明期のオンラインコミュニティは、男性、青年層、高所得者層、高学歴層といったように、ユーザー層に偏りのある特殊なコミュニティであった。それに対し現在は、誰もが利用出来るようになり、コミュニティそのものがユーザーニーズに応じて、多様化している。とりわけMixiを筆頭とするSNSの台頭は、マニア層以外の一般ユーザーが安心して利用できるサービスとして普及した。また初期ユーザー、マニア層を中心として「パソコンコミュニティ」が形成されている一方、通常のユーザーは携帯電話を利用した「ケータイコミュニティ」を形成しており、この二分化が現在の特徴だと言える。
 多様化したオンラインコミュニティサービスにおいては、そのコミュニティごとに様々なコミュニケーションスタイルが存在している。しかし、このオンラインコミュニケーションスタイルは、サービス提供者によって一方的に決められるものではない。開発・運営側とユーザー側の相互作用によって、決定されるものである。コミュニケーションのスタイルからオンラインコミュニティサービスを分類するならば、その時間性と記名性の二点から分類することが可能である。現在主流となりつつあるのは、選択的に時間性を共有し、記名性の高いMixi, Twitter, Facebookのようなサービスである。
 またICTの発展によって、かつては不可能であったようなタイプの創作活動が活発化している。ICTの導入以前は、同好の志を探すのは困難であり、地理的離隔によって共同作業を行うにも支障があった。ICTの導入により、このような問題は解決され、さらに作品を発表する場所も確保された。そしてこのような創作活動が支援するためのプラットフォームサービス事業が盛んになっている。
 ソーシャルネットワークサービスは、全世界では爆発的に普及しているが、日本においては、伸び悩みの傾向がある。特に全世界的に普及しているFacebookは、日本においてはマイナーなサービスとなっている。これには、日本特有の事情がいくつか存在し、掲示板の存在や、携帯電話が主流といった日本特有の事情、読むことはあっても書き込む人がし少ない、匿名的コミュニケーションを好むといった文化的事情がある。
 オンラインコミュニティは、実在のコミュニティの弱点を補強し、人々が集う機会を拡大し、既存の人間関係を強化する機能を保有している。コミュニティサービスは、現在は一部のサービスに集中し、寡占化している状態であるが、より中小規模の専門特化したコミュニティサービスに分化していく可能性がある。

■目次
第1章 オンラインコミュニティの文化―ユーザー属性からのアプローチ
第2章 オンラインコミュニケーション
第3章 オンラインコラボレーション
第4章 オンラインコミュニティの現状分析
第5章 オンラインコミュニティの可能性(総論)

■執筆者一覧
平井 智尚  情報通信研究部 研究員 (第1章)
吉野 ヒロ子 星薬科大学 非常勤講師 (第2章)
大内 昭洋  日本電気株式会社 第三ITソフトウェア事業部 (第3章)
鈴木 俊介  情報通信研究部 研究員 (第4章、第5章)