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 一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめ、公開しています。これらの研究報告書はこちらからダウンロードすることができます。

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2014.10.01

  • 最新研究
  • 藍沢 志津
  • 裘 春暉
  • 楊 松

中印におけるICT利活用による社会的課題の解決に関する調査研究

 中国とインドはともに発展途上国でありながら、巨大な人口を抱えていること、広い国土を有すること、外資を積極的に導入し経済発展につなげようとしていることなど、多くの類似点がある。なかでは、両国政府がともに経済成長をけん引する万能ツール(General Purpose Technology: GPT)とされるICTに高い期待を寄せており、普及の促進に力を入れている。そうしたなか、本調査研究の目的は、中印両国におけるICT利活用による社会的課題の解決に関する取組みにスポットをあて、それぞれの特徴・相違を明らかにすることにある。
 そのためにまず、両国の経済発展状況を概観し、その上で、それぞれの通信市場について、固定、移動、およびインターネットの普及状況を確認した。中国とインドはともに大きい農村部を抱えており、農村の通信インフラ水準が都市部に比して大きく遅れているのも両国の共通点である。
農村部での通信インフラの普及に向けて、中国の場合は、2004年以降、「村村通電話プロジェクト」の推進により、現在、すべての行政村に電話が開通され、ブロードバンドの開通率も8割を超えた。また近年、「ブロードバンド中国」戦略というプロジェクトの実施により、農村部を含む国全体の固定およびモバイル・インターネット水準の底上げが図られてきている。これに対して、インドにおいては2006年以降、ユニバーサル・サービスの補助対象に移動体通信とブロードバンド・サービスも含まれるようになり、農村部における携帯電話の普及率が急速に高まってきたが、3Gサービスの利用は依然都市部にとどまっている状況にある。
このように、両国における通信インフラ整備の度合いに違いがあるゆえに、各分野で進められてきた利活用のレベルも違っていることが第2章および第3章で取上げられた事例から確認されている。
 第2章では、中国のICT利活用事例(教育、農業、医療、交通、工業、物流および環境の7分野)、また、第3章ではインドの利活用事例(電子政府、農業・漁業、金融、交通、保健、および女性の就業支援の6分野)を取り上げることにした。各分野におけるICTの利活用パターンは、大きく分けると、地域格差の解消、生産・医療など効率性の向上およびユーザー利便性の向上の三種類ある。
 ICTによる地域格差の解消への寄与は、中国の教育、農業、医療およびインドの農業・漁業、保健など多くの分野で確認されている。固定ないし移動体通信技術による地域間格差の解消は、国土が広く、地域間の発展レベルの格差も大きい両国にとって特に重要な意味を持つ。中国ではM2Mプラットフォームや医療情報プラットフォームなどが既に完成されたこともあり、スマート農業や遠隔医療などの事例が確認されたのに対して、インドでの利活用は依然SMSを活用した情報の提供サービスに限られている。
 また、ICTの利活用による効率性の向上という点では、通信技術の応用によって、人的・物理的なコストの削減が実現されていると広く知られている。具体的には、中国の教育分野で確認された授業レベルの向上や、医療分野で確認された診察水準の向上、環境分野で確認された環境保全水準の向上などの事例のほか、インドの電子政府分野における行政サービスの効率化、農業・漁業分野での情報取得手段の効率化につながった各々の事例も広い意味でこのパターンに属す。
 これらのほかに、ユーザー利便性の向上につながった利活用は交通分野で取上げられた交通ICカードの利用、タクシー料金清算アプリの活用および物流分野の宅配アプリの利用事例で確認されている。いずれの事例も中国に限られているのが現状である。ユーザーの利便性につながる利活用サービスの普及は、一定レベルに達した通信サービスの広範囲の普及が前提であるとすれば、やがてインドにも類似の市場が形成されると考えられる。
 また、中印両市場の通信インフラ環境の更なる改善に伴い、両国政府はともにICTの利活用促進に軸足を移し始めている。つまり、ICT利活用分野においては両国の間では程度の差があるが、潜在的な成長市場という点では大きく違いはないと考えられる。
他方、インドは中国に比して通信インフラおよび利活用が十分とは言えない状況にあるが、2014年5月に誕生したモディ新政権によって、通信インフラおよび利活用の普及促進が加速されるだろうとの見方もある。モディ首相はインド経済の発展のために、農村部の開発、ブロードバンドの普及、外資の導入を促進していくことを表明している。さらに、電子政府(NeGP)サービスを首相直轄にしようとする動きも伝えられており、今後インドの経済発展においてICT利活用による社会的問題の解決への期待がいっそう高まると考えられる。


目次

はじめに

第1章 中印におけるICTインフラ環境の現状について
1-1中印の経済発展概況
1-1-1 中国の経済発展概況
1-1-2 インドの経済発展概況
1-2 中印の固定、移動、インターネットの普及・利用状況
1-2-1 中国の固定、移動、インターネットの普及・利用状況
1-2-2 インドの固定、移動、インターネットの普及・利用状況

第2章 中国におけるICT利活用促進政策および事例について
2-1 教育分野
2-2 農業分野
2-3 医療分野
2-4 交通分野
2-5 工業分野
2-6 物流分野
2-7 環境分野

第3章 インドにおけるICT利活用促進政策および事例について
3-1 電子政府分野
3-2 農業・漁業分野
3-3 金融分野
3-4 交通分野
3-5 保健分野
3-6 女性の就業支援等の分野

おわりに


執筆分担

裘 春暉(一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 副主席研究員)
:はじめに、第1章中国関連、第2章、おわりにおよび全体の企画・編集

藍沢 志津(一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 副主席研究員)
:第1章インド関連、第3章、おわりに

楊 松(一般財団法人マルチメディア振興センター 北京事務所 研究員)
:第2章