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 一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめ、公開しています。これらの研究報告書はこちらからダウンロードすることができます。

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2014.10.01

  • 最新研究
  • 田中 絵麻

米国における位置情報サービスの発展と可能性-データ基盤構築とサービスの価値創出の視点から-

 緯度経度高度情報としての位置情報は、リアルな情報(商業、交通、個人情報等)と組み合わせ、ビッグデータ解析を行うことで価値創出につなげることができる。スマートフォン、タブレットに加え、今後は、M2Mでのセンサーや、グーグル・グラス等のウェアラブル端末も普及が見込まれており、ネット空間とリアル空間をつなぐ接点としての位置情報をいかに活用するかが焦点となっている。
 本調査研究では、米国における位置情報関連政策の展開を踏まえて、位置情報を構成する要素とその組み合わせによる価値創出に着目し、米国における位置情報活用サービス提供事業者を取り上げ、価値創出戦略の比較分析を行い、事業領域別の戦略とサービスの特徴について考察した。
 「第1章 米国におけるデータ基盤構築と位置情報サービス市場の形成」では、1960年代の初期政策から2000年代までの約50年間を対象に、主要な位置情報関連政策の展開を調査した。米国では、早期から軍事目的のみならず民間における位置情報活用、市場発展を見据えて、政府支援のもとでの技術開発、アンカーテナンシー政策による測位衛星・画像衛星・リモート・センシング衛星の打ち上げが実施されてきた。また、地理情報、気象情報、海洋情報と位置情報を組み合わせて、公共安全、気象予報等の公共サービスも拡充されてきた。同時に、GPS信号民間開放と衛星画像の民間提供により、B2BとB2Cのナビゲーション市場が成長した。さらに、1990年代以降は、国土空間データ基盤(NSDI)整備政策により、基盤空間データを重要な社会インフラとみなし、相互に利用しやすいよう技術や制度の整備を実施し、位置情報データのオンライン化を促進した。さらにオバマ政権では、電子政府ポータルからのアクセス改善、データフォーマットの標準対応が実施された。
 「第2章 米国における位置情報サービスの展開と市場拡大」では、米国における位置情報サービスの展開について、1990年代から2000年代中盤までの法人サービスの発展期、2000年代中盤のプラットフォーマーの登場期、2000年代後半以降のサードパーティによるサービス多様化期に分類し、分析を実施した。その際、米国における位置情報サービス事業者について、位置情報専門情報サービスのDirections Magazine、ベンチャー投資のための情報サービスのCrunch BaseとAngel Listの情報を利用して、世界の位置情報関連企業・スタートアップの約1,500社以上のリストを作成、米国の主要200社を抽出、分析した。
 分析結果から、一部、個人向けにはGPS端末(ガーミン)があるものの、2000年代中盤までは、個別企業向けの位置情報分析ソリューション、車輌トラッキング、モニタリング等の専門性が高いB2B向けサービスが主流であった。この状況が大きく変化した要因として、2000年代中盤にスマートフォンが登場したのと前後して、Google Maps等の個人利用が可能な地図サービスの提供が開始され、キラーアプリの一つとなったことが挙げられる。Googleは自社サービスのAPIを公開し、サードパーティのアプリ開発基盤を提供したことから、サードパーティの位置情報活用型サービスが多数登場、クーポン等の販促ツール型、ローカル情報提供型、ゲーム等のエンターテイメント型等のアプリが人気を競っている。Googleの他、Apple、NokiaのモバイルOS、 Facebookも同様の戦略を採用し、これらの企業のサービスのプラットフォーム化が進展した。2000年代中盤以降は、新興スタートアップによる、位置情報サービスが登場、個人向けサービスの多様化が進展した。新興スタートアップ企業は、ベンチャー投資で成長、Google等の大手による買収、IPOで事業拡大している点が特徴である。なお、本報告書では、企業戦略の分析に利用した、これらの主要約200社については、企業概要・サービス概要について参考資料として添付した。
 「第3章 位置情報活用型の次世代ICTサービスと価値創出の可能性」では、主に2010年代以降の最近の位置情報関連技術の発展と、大手事業者の動向を分析し、今後の位置情報サービスの可能性について考察した。Google等の大手ネット事業者は、プラットフォームのオープン化戦略を採用した結果、新興サービスとの競合が発生しており、近年、端末分野へ進出し、サービスと端末の垂直統合の度合いを高めている。こうしたなか、コネクテッド・カー、M2M、ウェアラブル端末の研究開発、ロボット分野への進出、関連βサービスの提供を活発化しているところである。こうした端末とサービスの融合において、位置情報がサービス開発の要の一つとなっており、クラウド化とビッグデータ解析により、B2B2Cの効率・利便性向上が図られている。また、個人向けサービスにおいても、屋内位置情報計測技術の発展、搭載センサーの多様化、ジェスチャー操作の改善により、位置情報関連サービスの自動化(プッシュ化)や、操作性の向上が図られている。本章での分析からは、米国において、①位置情報や地図データと、②クラウド化されたサービス提供基盤、③スマートフォンやウェアラブル端末等の端末の組み合わせがダイナミックに行われることで、位置情報サービスの価値が創出されつつあると言える。
 本報告書での分析により、米国では、政策、企業戦略の両面で、位置情報を戦略的に活用する視点があり、①ハードとソフトの垂直統合型製品の登場(ハードとソフトの発展期)、②プラットフォーマーの登場(ソフトウェアの成熟とコモディティ化時期)、③サードパーティによるサービス登場(サービスの多様化期)と、市場が累積的に発展してきたという知見が得られた。また、近年は、大手企業はハードとの垂直統合強化による差別化を図る戦略も採用している。また、米国の中長期的な政策展開の分析からわかるように、位置情報データを社会インフラの一つに位置づけ、公共的利用と市場発展の両方を推進する政策が有効であると考えられる。日本においても、2007年に地理空間情報活用推進基本法が成立、2010年以降は、準天頂衛星システムの打ち上げが進められている。従来、米国が主導してきたGPSは欧州、中国、インドでも取り組みが活発化していることから、今後の位置情報サービスの国際市場の拡大を見据え、グローバル戦略、国際連携が重要であることを付記したい。

目次

はじめに 位置情報の活用による価値創出と次世代ICTサービスの可能性

第1章 米国におけるデータ基盤構築と位置情報サービス市場の形成
1-1 地理空間データの基盤構築・制度整備-市場形成促進策の展開
1-2 地理空間データの基盤整備-公共財の供給による市場形成の促進
1-2-1 政府による衛星事業支援と地理空間データの民間開放
1-2-2 政府によるGPS信号の民間開放と位置情報データの政策的位置づけ
1-2-3 地理空間データの民間開放による位置情報サービス市場形成
1-3 地理空間データ活用の基盤整備とオープン・データの推進
1-3-1 位置情報のデータ管理体制の整備
1-3-2 NSDI整備政策の展開とデータ公開状況
1-3-3 GeoPlatform.govにおけるデータ集約と公共アプリケーションでの利用
1-4 地理空間データ基盤の整備と位置情報サービス市場の発展の関係性

第2章 米国における位置情報サービスの展開と市場拡大
2-1 米国における位置情報産業・位置情報サービスの発展段階
2-1-1 米国における位置情報サービス市場の発展経緯と分析アプローチ
2-1-2 位置情報サービス・企業の抽出方法
2-1-3 分析対象企業の分布等
2-2 位置情報サービスの登場と法人向け市場の展開
2-2-1 法人向けサービス・製品の発展と変化
2-2-2 主要な法人向けの位置情報サービス企業・スタートアップ
2-2-3 法人向け位置情報サービスの展開と変化
2-3 位置情報サービスのプラットフォーム形成と市場変化
2-3-1 ネット・サービス事業者による位置情報プラットフォームの形成
2-3-2 SNS事業者による位置情報プラットフォームの提供と戦略
2-3-3 通信事業者による法人向け位置情報データ解析分野への取り組み
2-4 位置情報サービスのソーシャル化とパーソナル化-2005年以降の市場変化
2-4-1 個人向けの位置情報サービスの登場と増加
2-4-2 主要な個人向けの位置情報サービスのスタートアップ
2-4-3 個人向け位置情報活用型サービスの特徴-ソーシャル化とパーソナル化
2-4-4 個人向け位置情報サービスの利用拡大
2-5 米国の位置情報サービス市場の発展要因-中間財のオープン化による市場形成
2-5-1 位置情報サービス市場の分野-公共向け、法人向け、個人向け
2-5-2 法人向け位置情報サービス市場の発展要因-公共財の供給
2-5-3 個人向け位置情報サービス市場の発展要因-プラットフォーマーの役割
2-5-4 米国の位置情報サービスの発展要因-中間財のオープン化と累積的発展

第3章 位置情報活用型の次世代ICTサービスと価値創出の可能性
3-1 位置情報サービスの市場規模と位置情報活用型次世代ICTサービスの市場予測
3-1-1 位置情報活用型の次世代ICTサービスの方向性
3-1-2 位置情報サービスの市場規模、経済効果に関する調査結果
3-1-3 位置情報活用型の次世代ICTサービスのビジョン
3-2 位置情報活用型の次世代端末の開発動向-ネット・サービス事業者の動向
3-2-1 ウェアラブル端末の開発動向
3-2-2 次世代端末における操作性改善に向けた技術開発動向
3-2-3 コネクテッド・カーと自動運転の動向
3-3 位置情報データ活用によるイノベーションと価値創出-要素結合の必要性
3-3-1 アトムの世界における位置情報
3-3-2 ビットの世界における位置情報
3-3-3 アトムとビットとつなぐ位置情報活用型次世代ICTサービスの展望
3-3-4 次世代ICTサービスの価値創出の要件-コンテクスト理解の必要性

おわりに 次世代ICTサービスによるリアル社会での価値創出

参考資料
添付資料 位置情報関連企業・スタートアップの概要
報告書・添付資料で取り上げた企業名索引


執筆分担

田中 絵麻(一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 副主席研究員)
:はじめに、第1章~第3章、おわりに、添付資料

荒川区総務企画課 ニュータウン事業推進員 米浜 健人
(元マルチメディア振興センター 非常勤研究員)
:第2章、添付資料