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 一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめ、公開しています。これらの研究報告書はこちらからダウンロードすることができます。

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2014.10.01

  • 最新研究
  • 飯塚 留美
  • 甲田 正夫

電波有効利用方策としての周波数共用をめぐる米欧の動向

 電波の逼迫に対する対応策として、世界的に進められているのが、低利用や死蔵の免許帯域を周波数移転させて、新たな周波数を確保することである。特に欧米では、民間利用の周波数を移転させて新たに周波数を確保するだけでなく、政府が使用する周波数も積極的に民間に開放する動きが高まっている。
 しかし、周波数移転を伴う新たな電波の確保は、他の周波数帯への移転コストが発生したり、周波数の移転期間に時間を要するなど、新たな電波利用者に対して、電波の割当てを迅速に進めることが困難なケースも多い。
 そのため、米国では、当事者間による周波数取引によって、電波の再配分の最適化を図ることが期待されている。しかし、電波を獲得するための周波数取引や、電波の獲得を目的とした企業買収・合併は、公正競争や消費者保護の観点から、規制当局の審査が行われ、その審査に時間がかかるケースも多く、電波を即時に入手できないことが、問題点として挙げられていた。
 そうしたなかで、近年、注目を集めているのが、排他的利用帯域(独占的に割り当てられた帯域)における周波数の共同利用である。既存免許人の周波数移転には時間やコストがかかることから、周波数を共用することによって迅速に周波数へのアクセス機会を増やす狙いがある。周波数共用には、同じ周波数を時間単位で異なる免許人が使用したり、同じ周波数を地理的に異なる免許人が使用する場合が含まれ、一次業務の免許人に干渉を起こさないことを条件に、他の業務やユーザーが利用できるようにする。典型例は、地上テレビ放送帯域の地域によって未使用の帯域(ホワイトスペース)を使った無線ブロードバンド通信などがあるが、このような周波数へのアクセス方法を、他の帯域へも拡大しようという動きが、米国や英国で進められている。
 米国では、連邦政府が使用している帯域を、民間と共用することが、電波の有効利用に資する有効な方法であるとの方針が示され、国防総省の周波数への民間のアクセスを規定する制度整備に向けた取組みが進められている。こうした動きは、英国でも進められており、民間部門における電波需要の高まりに対応するために、政府機関の周波数利用の見直しや再編を進め、民間に開放する動きが進展している。
 こうした官民をまたがる周波数の共同利用の拡大にともなって、周波数の官民共用を実現するためのルール作りや、干渉回避のための技術的な取組みなどが進められている。
米国では、官民の周波数共用の枠組みを構築するため、周波数帯ごとに利用者を登録し、使用条件を規定する「連邦周波数アクセスシステム(Federal Spectrum Access System: SAS)」が新設された。①連邦政府を含む既存免許人、②優先アクセス免許人(免許制)、③一般認可アクセスユーザー(登録制)の順番で周波数へのアクセス権を認め、既存免許人に干渉を及ぼさないことを条件に、優先アクセス免許人や一般認可アクセスユーザーの利用が認められる。また、米国政府は、上記②の民間セクターの免許人から得たオークション収入や、連邦政府用周波数の使用料として徴収した手数料収入を、各連邦政府機関が進める周波数共用や周波数効率向上のための必要な投資に充当し、周波数共用を連邦政府機関に促すインセンティブを提供する。また、欧州では、免許制による周波数共用(Licenced Shared Access: LSA)が提唱され、政府機関の周波数使用にあたり、通信事業者間で帯域を共用する方針が示されている。
 技術的な取組みとしては、官民による周波数共用の実現に向けて、米国では、国防総省が「Shared Spectrum Access for Radar and Communications: SSPARC」プログラムを開始し、軍民との周波数共用技術開発を進めている。また、周波数共用化の進展を踏まえ、受信機側の性能向上に向けた仕様見直しが進められる共に、干渉に強い耐性を持った受信機開発のための実証実験に向けた検討が進展している。
利用できる電波が枯渇している状況を打開するために、政府が保有する周波数を民間に開放して、官民で周波数を共用する方針が示されている米英の状況を踏まえ、わが国も省庁横断的な周波数再編や周波数管理を進め、周波数共用のための研究開発や制度整備を、積極的に進めていくことが期待される。
 また、2020年の仕様策定を目指して検討が進められている5Gシステムについて、今のところ、使用される周波数帯について、具体的な候補帯域が掲げられているわけではないものの、局所的なトラフィック増を収容するために、ミリ波帯を利用した超小型基地局の開発が行われている。これらを踏まえると、5G以降は、必ずしも全国規模のカバレッジの周波数は必要ではないと考えられる。そのため、局所的に必要な時に必要な容量を柔軟に確保できるような周波数へのアクセス手段の提供の一手段として、周波数共用が一つに解になることが予想される。
 実際、英国Ofcomでは、3.5GHz帯をオークションで事業者に割り当てる計画であるが、同帯域の使用エリアは人口密度が高くトラフィックの集中する都市部での導入が想定されており、農村部での同帯域の利用は遅れると見られている。そのため、一定期間、3.5GHz帯の利用が認められない場合には、同帯域を別の事業者やユーザーに使用可能とするよう、制度的に担保することが検討されている。我が国でも、2014年末までに、4G(3.4-3.6GHz)の割当てが実施される予定であるが、英国と同様の事態が起きる可能性は否定できず、未使用の状態が続いた場合の措置を、電波の有効利用の観点から検討しておく必要があろう。その場合に、特定エリアの電波利用に係る利用料設定や、周波数共用による利用料の減免措置といった問題が浮上してくると考えられる。
 このように、トラフィック密度の高い特定エリアの電波需要を満たすだけであれば、全国規模の免許を付与する必要はなく、技術的な共用検討をした上で、地理的な周波数共用を進めていくのも、一つのオプションであると考えられる。今後、周波数共用が進むにつれて、こうした技術的な共用検討に係る事務は、増えていくものと考えられ、こうした費用を誰がどうやって負担していくのかについても、検討していく必要がでてくるであろう。

目次

第1章 電波開放政策の経緯
1-1 周波数の新たな確保
1-1-1 米国
1-1-2 カナダ
1-1-3 欧州(EU加盟国)
1-1-3-1 英国
1-1-3-2 フランス
1-1-3-3 ドイツ
1-1-4 韓国
1-1-5 日本
1-2 政府機関の周波数開放
1-2-1 米国
1-2-1-1 NTIA
1-2-1-2 OSTP
1-2-2 英国

第2章 米国の政策的な取組み
2-1 電波有効利用としての官民周波数共用
2-2 PCAST報告書の勧告概要
2-2-1 1,000MHz幅の官民共用帯域“周波数スーパーハイウェー”の創出
2-2-2 連邦周波数アクセスの3層構造アプローチ
2-2-3 送信機と受信機の双方の技術仕様の管理
2-2-4 連邦政府用周波数の官民共用化による歳入機会の創出
2-2-5 連邦周波数へのインセンティブメカニズムの導入
2-2-6 官民パートナーシップによる周波数共用試験サービスの実施
2-2-7 3.5GHz帯における“一般認可アクセス”の導入
2-3 3.5GHz帯の周波数共用の実用化をめぐる動き
2-3-1 FCC規則案の概要
2-3-2 3.5GHz帯での周波数共用技術のフィールド試験
2-3-3 周波数共用に関する利害関係者の見解
2-4 周波数共用促進のための受信機性能向上をめぐる取組み
2-4-1 GAOのFCCへの勧告
2-4-2 FCCの「干渉限界ポリシー」
2-5 周波数共用技術の実証実験のモデル都市
2-6 ブルッキングス研究所による「電波裁判所」の提案

第3章 英国の政策的な取組み
3-1 電波政策概略
3-1-1 「周波数管理戦略」
3-1-2 「Mobile Data Strategy」
3-2 商用周波数の共用促進
3-2-1 周波数共用の枠組み
3-2-2 免許不要利用の促進
3-3 国防省の周波数開放
3-3-1 国防省による主な周波数使用
3-3-2 国防省による周波数の開放
3-3-3 国防省による軍事用周波数管理の改革
3-3-4 国防省が保有する2.3GHz帯及び3.4GHz帯の民間への開放
3-3-5 国防省と民間との周波数共用帯域

第4章 欧州の政策的な取組み
4-1 RSPGの取組み
4-1-1 公共セクターの周波数の共用化に向けた意見書
4-1-2 LSAの提案
4-2 欧州でLSAが議論される背景
4-3 LSA制度枠組み
4-3-1 免許制度におけるLSAの位置づけ
4-3-2 LSAの規制枠組み
4-4 欧州諸国におけるLSAの導入見通し
4-5 LSA免許料の算定方法

第5章 米国の周波数共用に向けた技術的な取組み
5-1 政府主導による無線技術の研究開発支援
5-1-1 2015年度の米国連邦政府機関の研究開発(R&D)投資予算
5-1-2 政府の無線技術研究開発支援
5-2 主要研究プログラムの動向
5-2-1 国立科学財団
5-2-2 国防総省国防高等研究計画局
5-2-3 商務省国家電気通信情報局
5-2-4 ネットワーク情報技術研究開発
5-3 DARPAによる周波数共用技術の研究開発
5-3-1 概要
5-3-2 米国のレーダバンドと利用状況
5-3-3 SSPARCプログラムの研究課題
5-3-4 SSPARCプログラムの開発の焦点
5-3-5 SSPARCプログラムのフェーズ及びタスク
5-3-6 周波数共用のための分離メカニズム
5-3-7 分離メカニズムの例
5-3-8 SSPARCプログラムに採択された提案
5-4 周波数共用技術に必要な研究開発分野
5-4-1 LSA/ASA
5-4-2 地理的位置情報データベース
5-4-3 コグニティブ無線とインテリジェントネットワーク
5-4-4 広帯域センシング
5-4-5 分散センシング
5-4-6 周波数集約
5-4-7 干渉緩和
5-4-8 無線アドホックネットワーク
5-4-9 ネットワーク復元力
5-4-10 セキュリティ
5-4-11 ネットワークプロトコルとアーキテクチャの評価

第6章 欧州の周波数共用に向けた技術的な取組み
6-1 LSA/ASAの構成
6-2 欧州のLSA/ASAに関する規制・研究開発・標準化動向
6-2-1 規制機関
6-2-1-1 CEPT
6-2-1-2 EC/RSPG
6-2-2 標準化機関
6-2-3 研究機関
6-2-3-1 METIS
6-2-3-2 CORE+
6-2-3-3 CoMoRa
6-2-3-4 ADEL

第7章 おわりに
7-1 官民周波数共用による民間の周波数アクセス機会の拡大
7-2 政府用周波数の割当て見直しに着手した米英
7-3 省庁横断的な政府用周波数の使用状況を踏まえた割当て見直し
7-4 周波数共用を実現するための無線技術開発
7-5 5Gシステム導入で進むと見込まれる周波数共用
7-6 周波数共用を前提とした電波割当てのあり方
7-7 周波数共用技術に対する持続的なR&D支援
7-8 わが国への示唆

執筆分担

飯塚 留美(一般財団法人マルチメディア振興センター 電波利用調査部 研究主幹)
:第1~4章、第7章

甲田 正夫(元 財団法人国際通信経済研究所 電波利用調査部 研究主幹)
:第5~6章