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 一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめ、公開しています。これらの研究報告書はこちらからダウンロードすることができます。

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2015.10.01

  • 最新研究
  • 飯塚 留美

5Gをめぐる海外動向 -技術・市場・政策- 

 2020年以降に導入が予定されている、次世代の移動通信システムである第5世代移動通信システム(5G)の技術規格の策定に向けた検討が、日本も含めて世界的に進められている。国際電気通信連合(International Telecommunications Union: ITU)の無線通信部門(ITU Radiocommunication Sector: ITU-R)は2015年6月、5Gの正式名称を「IMT-2020」とすることを確認し、2020年中の仕様完成を目指すロードマップを発表した。また、ITU-Rは「IMTビジョン勧告」と称されるレポートを発表し、5Gに求められる8つの主要能力を定義するとともに、3つの利用シナリオに応じて異なる主要能力が求められることを示した。3つの利用シナリオには、①高度モバイルブロードバンド(Enhanced Mobile Broadband: eMBB)、②大量機械型通信(Massive machine type communications: mMTC)、③超信頼・低遅延通信(Ultra-reliable and low latency communications: uMTC)がある。超低遅延性が要求されるuMTCは5G特有のアプリケーションとされ、自動運転などの分野への展開が想定されている。また、mMTCは、従来のM2Mを大規模化したもので、IoT(Internet of Things)ニーズに応えるものとなっている。

 特にIoTの台頭は、5Gの技術検討にも大きな影響を与えている。移動体通信の国際的な標準化機関である3GPPでは、5Gのユースケースや周波数をめぐる検討において、メンバー間で立場の相違が見られる。2018年冬季・2020年夏季オリンピックの開催を控えている韓国や日本は、20Gbps級の超高速ブロードバンドの実現のために、20-40GHzでの5Gシステムの実現を優先している。一方、欧州では「インダストリー4.0」に象徴されるように、欧州主要キャリアはIoTの市場拡大に向け、多種多様な産業分野への5Gの組込みを念頭に置いていることから、1GHz以下の低い帯域を含む6GHz以下での5Gシステムの検討を優先している。そのため、異業種産業の多数のIoTニーズを単一の5Gネットワークで実現するため、各要件に応じたプロトコルや実装でコアネットワークを作り分ける「ネットワーク・スライス」という技術の検討が進められている。こうしたことを背景にIoT推進派は、5Gの標準化や実証実験を進めるにあたり、多種多様な産業分野の参画を求めている。

 このように、5Gが想定している世界とは、従来のモバイルブロードバンドの更なる高速化・大容量化に留まらず、IoTニーズの高まりに伴って各産業分野への5Gの導入が進むとともに、スマートシティに代表されるような、道路、交通機関、電気、ガス、水道といった社会的インフラストラクチャーへの5G展開によって、資源の最適な配分や管理を実現することで、環境に配慮したより住みやすい社会の実現を目指すことも想定されている。また、従来存在しなかった新たな市場として、ドローンや自動運転などの無人移動体市場が挙げられる。Amazonが打ち上げたドローン配送システム構想を契機に、ドローン市場は空の産業革命として大いに注目されている。米国ではNASAがドローン専用の航空管制システムの開発をVerizonと協力して行っているほか、Googleが携帯事業者のLTE網を使ってドローンの試験航行を行っていると見られており、こうした動きは5Gの世界でも同様に展開されると考えられる。

 上述したような多様な電波利用ニーズの高まりを踏まえ、5Gの候補周波数帯として、新たにミリ波帯をIMTバンドとして追加割当てすることが検討されている。米国連邦通信委員会(Federal Communications Commission: FCC)が24GHz以上で5Gに適した帯域を検討するための公開諮問を2014年10月に開始し、4つの帯域を5G帯域として選定した。また、英国通信庁(Office of Communications: Ofcom)が2015年1月に6GHz-100GHzでの5G候補帯域の検討を開始し、同年4月に6つの候補帯域を選定した。また、欧州でも欧州電気通信主管庁会議(European Conference of Postal and Telecommunications Administrations: CEPT)が2015年9月に、7の帯域を5G候補帯域として欧州共通の立場とすることを決定した。さらに、5Gシステムの検討では、6GHz以下のIMTバンドも5Gをサポートすることが想定されているほか、Wi-Fiが使用している免許不要帯域での5G運用も視野に入っている。一方で、5G候補帯域の検討に加えて、5G時代における免許制度のあり方についての議論も米国や英国で進められており、多種多様なサービスや免許人が登場することを踏まえ、政府ユーザーも含め既存免許人を保護しながら新たなユーザー/サービスに対してどのように電波免許を割当てるべきか、また、異なる複数の新規ユーザー/サービス間でどのように電波を共同利用していくのかなど、新たな免許付与アプローチをめぐる議論も始まっている。

目次

1. 5G研究開発・標準化動向
1.1. 標準化機関・業界団体の動向
1.1.1. ITU-R
1.1.1.1. IMT-2020標準化のロードマップ
1.1.1.2. IMTビジョン勧告の概要
1.1.1.2.1. 動向観測
1.1.1.2.2. 2020年以降のIMT利用シナリオ
1.1.1.2.3. IMT-2020の能力
1.1.1.3. IMTバンドの対象を275-1000 GHzまでとする新提案
1.1.2. 3GPP
1.1.2.1. IMTビジョン勧告への合意
1.1.2.2. ユースケース及び周波数をめぐる議論
1.1.2.2.1. 「インダストリービジョン」のアプローチ
1.1.2.2.2. 欧州オペレーター主導のアプローチ
1.1.2.2.3. 中国+Alcatel-Lucentのアプローチ
1.1.2.2.4. 次のステップ
1.1.2.3. 5G仕様の一部を早期に公開
1.1.2.4. 6 GHz以上におけるチャネルモデルの研究
1.1.3. NGMN Alliance
1.1.4. GSMA Intelligence
1.1.5. 4G Americas
1.1.6. Small Cell Forum
1.1.7. IEEE
1.2. 欧州の動向
1.2.1. 概況
1.2.2. 英国サリー大学
1.2.3. METISプロジェクト
1.2.4. 5GNOW
1.2.5. 5G PPP
1.2.5.1. 概況
1.2.5.2. METIS-II
1.2.5.3. mmMAGIC(6GHz以上)
1.2.5.4. FANTASTIC-5G(6GHz以下)
1.2.5.5. 5G NORMA
1.2.5.6. Flex5Gware
1.3. 韓国及び中国の動向
1.3.1. 韓国
1.3.1.1. 技術標準化
1.3.1.1.1. 5G開発に向けた政府の取り組み
1.3.1.1.2. 国際連携に向けた取り組み
1.3.1.1.3. 技術開発
1.3.1.2. 国内企業の動向
1.3.1.2.1. 通信事業者
1.3.1.2.2. メーカー
1.3.1.2.3. 国内業界の課題
1.3.2. 中国
1.3.2.1. 中国IMT-2020推進グループ
1.3.2.2. 国家科学技術重大専門プロジェクト
1.4. 主要企業の動向
1.4.1. 主要ベンダー
1.4.1.1. Ericsson
1.4.1.1.1. スウェーデンのための5G開発プログラム
1.4.1.1.2. 英独の大学研究機関との提携
1.4.1.1.3. 産学官横断の5Gの欧州研究開発プログラム
1.4.1.1.4. 13GHz帯での5Gモバイル端末の試験
1.4.1.2. Nokia
1.4.1.2.1. 産官学連携の5G試験網
1.4.1.2.2. 独カイザースラウテルン工科大学と5G技術開発で提携
1.4.1.2.3. 70GHz帯の5G実証実験
1.4.1.2.4. 73GHz帯での10Gbpsの伝送試験
1.4.1.2.5. 6GHz以下の5G無線技術の研究開発
1.4.1.2.6. 5G対応マルチサービスアーキテクチャー
1.4.1.3. Alcatel-Lucent
1.4.1.3.1. 5GNOWプロジェクトの完了
1.4.1.3.2. Fantastic-5Gを主導
1.4.1.3.3. 独ドレスデン工科大学との提携
1.4.1.4. 華為技術
1.4.1.4.1. 欧州5G PPPの5つのプロジェクトに参画
1.4.1.4.2. 5G Vertical Industry Accelerator
1.4.1.4.3. 5G技術のビジョン
1.4.1.4.4. NTTドコモと6GHz以下で5G無線アクセス技術を検証
1.4.1.4.5. Vodafoneと5G技術の研究開発でMoUを締結
1.4.2. 主要通信事業者等
1.4.2.1. 米国Verizon
1.4.2.2. 米国Google
1.4.2.3. 英国Vodafone
1.4.2.4. 仏国Orange
1.4.2.5. 独国Deutsche Telekom
1.4.2.6. 韓国SK Telecom

2. 新市場動向
2.1. 5Gの新たな市場領域
2.2. 自動運転
2.2.1. 政策的な取組み例
2.2.1.1. 米国イノベーションの優先課題
2.2.1.2. 米国国家道路交通局による規制見直し
2.2.1.3. 英国自動運転車の路上実験エリアの選定
2.2.2. 実用化の見通し
2.2.3. 公道走行試験
2.3. ドローン
2.3.1. ドローンの用途
2.3.2. Amazonのドローン配達システム
2.3.3. NASAのドローン交通管理システム開発
2.3.4. ドローン向け周波数
2.3.4.1. 中国がドローン専用周波数を配分
2.3.4.2. GoogleのLTEドローン試験

3. 周波数政策動向
3.1. 5Gの候補周波数帯
3.1.1. 概要
3.1.2. FCC
3.1.2.1. ミリ波帯の移動利用に関する公開諮問
3.1.2.2. リプライコメント
3.1.2.3. 5G候補帯域の特定
3.1.3. CEPT
3.1.4. Ofcom
3.1.5. APT
3.1.6. 韓国
3.2. 免許不要帯域のLTE利用
3.3. 米国の官民周波数共用をめぐる取組み
3.3.1. DARPAの研究開発
3.3.2. 実証実験のモデル都市
3.3.3. 国家高度周波数・通信試験網

4. おわりに
4.1. 電波の柔軟な利用を可能とする制度枠組みの検討
4.2. 周波数アクセス機会拡大のための官民周波数共用の推進

執筆担当

飯塚留美 電波利用調査部 研究主幹

三澤かおり 情報通信研究部 主席研究員