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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
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2012.10.01

  • 最新研究
  • 平井 智尚
  • 七邊 信重

ソーシャルネットワークサービスの現状とその将来

 本報告書は、国内及び海外において近年、急速に拡大しているソーシャルメディア、ソーシャルネットワークサービスの現状を把握し、これを多角的な視野から、総合的に分析・研究し、さらにその将来像について検討するものである。
第1章では、ソーシャルネットワークサービスの現状を概観し、ソーシャルネットワークの分類、利用状況、利用目的、企業のSNS利用状況、ビジネスモデルなどについて検討を行う。またソーシャルネットワークサービスの社会的機能について考察し、それを「情報・コンテンツ生産と人材育成機能」「ネットワーキングの(再)構築機能」「対抗的言説の生成機能」と定義づける。
 第2章においては、社会学や政治学の分野において注目を浴びている「社会関係資本」という概念を手掛かりにして、ソーシャルネットワークサービスのコミュニティとしての側面を中心にして考察する。ここにおいては、米国および日本における社会関係資本の低下と、それに伴う地域コミュニティの崩壊が問題とされ、社会関係資本の重要性と、その性質が「橋渡し型」「結束型」の二つに分けられることをまとめた上で、社会関係資本論のプラットフォームとしてインターネットが活用できるかどうか、現在の主要SNSの評価を含めて検討する。
 第3章においては、ソーシャルネットワークサービスのメディアとしての側面、つまり「ソーシャルメディア」について考察し、このソーシャルメディアと既存のマスメディアの関係、つまり競合するのか、共生するのか、あるいは「棲み分ける」のかという問題を考察する。そのため既存のマスコミュニケーション研究における理論の枠組みをソーシャルメディアに適応して、これによってソーシャルメディアの性質を理解し、その上でソーシャルメディアとマスメディアの「共生的」「相互依存的」な関係を描き出す。
 第4章においては、近年になって急速な普及、拡大を遂げているスマートフォンを中心に、モバイルデバイスとソーシャルネットワークサービスの関係について考察する。とりわけ、GREEやmobageなどのソーシャルゲームにおけるコミュニケーションを「薄くて軽い」コミュニケーションであることを指摘し、このようなコミュニケーション形態は、Facebookの「いいね」という機能に共通する構造であることを指摘する。以上のことから、モバイルデバイスとソーシャルネットワークサービスの組み合わせは、「どこにいても他者と繋がっていたい」という現代人のコミュニケーション欲求を満たしていると分析する。
 第5章においては、ソーシャルメディアの利用が急速に拡大し、その特性や潜在力が示された事例として、東日本大震災発生時のソーシャルメディア利用を考察している。ここではまず阪神・淡路大震災発生時のICT利用を取り上げ、その利点や課題を考察した。次に、東日本大震災の発生時のソーシャルメディアの利用状況を取り上げ、またソーシャルメディアを通じたデマの拡散およびその打ち消しを考察する。最後に、災害発生時に一時的に発生する「災害ユートピア」という観点から、ソーシャルメディア上の様々な活動を考察し、今後の災害発生時の情報発信のあり方について検討する。

■目次
第1章 ソーシャルネットワークサービスの現状
はじめに
1-1 ソーシャルネットワークサービス(SNS)とは何か
1-2 ユーザのSNS利用状況
1-3 企業のSNS利用動向
1-4 SNS事業者のビジネスモデル
1-5 ソーシャルメディア・SNSの社会的機能

第2章 社会関係資本論とソーシャルネットワーク
2-1 問題意識
2-2 社会関係資本論とはなにか
2-3 パットナムのインターネット評価
2-4 社会関係資本のプラットフォームとしてのネットサービス
2-5 社会関係資本を強化していくにはなにが必要なのか

第3章 ソーシャルメディアとマスメディア
3-1 はじめに
3-2 マスメディアとソーシャルメディアの位置づけ
3-3 マスコミュニケーションの影響力に関する研究とソーシャルメディア
3-4 「影響力の流れ」と「情報の流れ」
3-5 ソーシャルメディアと公共性(マスメディアの必要性)
3-6 ソーシャルメディアと議題設定
3-7 ソーシャルメディアとマスメディアの将来

第4章 モバイルデバイスとソーシャルネットワークの今後
4-1 国内SNS市場の現状
4-1-1 概要と主要5サービス
4-1-2 SNSの利用状況とモバイルデバイス
4-2 ガラケーSNSにおけるコミュニケーション
4-2-1 スマートフォンとガラケー
4-2-2 薄くて軽い競争と協力
4-3 スマートフォンの普及によるソーシャルネットワーク拡大の可能性
4-3-1 いいね!されたい人々
4-3-2 どこにいても他者とつながりたい

第5章 東日本大震災とソーシャルメディア
はじめに
5-1 阪神・淡路大震災とICT利用
5-1-1 情報通信サービスの活用事例
5-1-2 ICTの利点
5-1-3 課題
5-2 東日本大震災におけるソーシャルメディアの利用
5-2-1 ソーシャルメディアの普及
5-2-2 震災時におけるソーシャルメディア利用状況の概観
5-2-3 ソーシャルメディアの利用実態:Twitterと動画投稿サイト
5-3 ソーシャルメディアと誤情報
5-3-1 コスモ石油の製油所火災に関するデマ
5-3-2 放射能対策とうがい薬
5-4 ソーシャルメディアと災害ユートピア
5-4-1 災害ユートピア
5-4-2 ポピュラーなソーシャルメディア利用にみるユートピア
5-4-3 日常と非日常をつなぐソーシャルメディア

第6章 ソーシャルネットワークサービスの展開(総論)
6-1 総括
6-2 ソーシャルネットワークサービスと人間関係論
6-3 ソーシャルネットワークサービスと社会的連帯

■執筆者一覧
七邊 信重 情報通信研究部 研究員 (第1章)
吉野 ヒロ子 星薬科大学 非常勤講師 (第2章)
鈴木 俊介 日本経済大学 経済学部経営学科 准教授( 第3章、第6章)
外崎 華 株式会社スマイルラボ 企画担当 (第4章)
平井 智尚 情報通信研究部 研究員 (第5章)