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2013.10.01

  • 最新研究
  • 飯塚 留美
  • 三澤 かおり
  • 甲田 正夫

電波資源の有効利用あり方に関する調査研究

今日、スマートフォンやタブレット、またコネクテッド端末などを通じたモバイル情報へのアクセスの拡大が、モバイルデータ需要を急速に押し上げている。シスコによれば、2012年から2017年の5年間に、世界のモバイルデータのトラフィック量は13倍増になると予測されている。また、OECDによると、現在、モバイルネットワークに接続されている端末(M2Mを含む)の数は、世界で約50億台であるが、2020年までに500億台に拡大するとしている。さらに、GSMA/Machina Researchの調査によれば、2020年までに、無線技術を基盤とした既存ビジネス拡大や新市場創造の世界経済規模は、4兆5,000億米ドルにのぼると予測されている。
こうした電波関連市場の成長は、これまでにない無線周波数の商業利用の需要をもたらしている。拡大し続ける周波数需要は、電波の希少性ゆえに、その価値をさらに高めることに貢献しており、市場原理に基づいた周波数オークションの実施によって、落札額の高騰(国庫収入の増大)が散見されるのは、当然の帰結といえる。
しかし、周波数オークションを実施するためには、特定の帯域の周波数を一定量確保する必要がある。電波利用者が少ない時代には、比較的容易に確保できたかもしれないが、今日のように、特に商用周波数帯において、周波数が稠密に使用されている状況では、新たに周波数を確保するのは容易なことではない。地上デジタル放送への移行に代表されるように、アナログからデジタルへのシステム移行や、無線から有線へのシステム移行などによって、新たな周波数を確保する取組みが進められるも、既存ユーザーの周波数移転コストを誰がどうやって負担するのか、周波数移転にどのくらいの期間を要するのかといった問題を解決する必要がある。
 また、これまで、政府機関が使用している公共セクターの周波数は、稠密に使用されていないとの指摘に基づき、その一部を商業利用のために民間に明け渡すべきとの議論が、特に米英で繰り広げられてきた。しかし、周波数需要の高まりは公共セクターにも生じている。例えば、米国の国防総省が運用する、複数の周波数帯を同時に使用する高度な無線システムを搭載した無人航空機システム(unmanned aerial systems: UAS)の導入機数は、2002年から2010年の間に、167機から7,500機へと劇的に増加したと報告されている。
 こうしたなか、特に商用周波数の不足を補う方策の一つとして注目されているのが、公共セクターの周波数の官民共用である。これは、公共セクターの免許人に干渉を及ぼさない限りにおいて、当該免許人の帯域の、登録制や免許不要による利用を、第三者に認めるものである。周波数へのアクセス機会を全ての人に提供することで、電波の有効利用を図ると共に、新市場の創出の契機となることが期待されている。
 特に米国において、公共セクターの周波数共用化が推進される背景には、国家の歳入増への期待がある。既存の連邦政府ユーザーの周波数移転を行い空いた帯域をオークションにかけ国庫収入を確保する方法もあるが、周波数移転に要する時間とコストを考慮すると、連邦政府用周波数を民間へ貸し出すことにより電波の経済的価値に相当する料額を手数料として徴収する方が得策であるとの考え方である。米国の場合、日本の電波利用料に相当する行政手数料は、経済的価値が反映された料額体系にはなっていないこと、また、連邦政府にとっては周波数の有効利用を行うインセンティブがないことから、「電波手数料」制度の導入により新たな収入源を特定財源(“周波数有効利用基金”)として確保し、それを原資として連邦政府用周波数の有効利用に向けた投資促進を図ろうとしている。
 また、このような周波数の共用化の進展は、新たなイノベーションの源泉をもたらすと考えられる。米国防総省国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は、周波数共用に関する研究開発に資金供与するプログラムを2013年2月に開始し、周波数共用に有効な画期的な最先端技術の開発を目指しており、今後の進展が注目される。
 さらに、周波数の共用化を一層効果的に進めるために、与被干渉検討において、送信側のみの対策では限界があるため、受信側についても技術仕様の見直しを図る点が注目される。受信機性能を向上させ、受信障害を減らすことで、共用帯域における周波数の利用効率を高めるねらいがある。米国では既に、受信機性能の向上に向けた様々なオプションの実用的効果に関する情報を収集するため、パイロット試験を実施することが検討されている。
 公共セクターの周波数を官民で共用することを推進している米国の取組みを踏まえるならば、日本においても省庁の壁を超えた統一的な電波再編や周波数管理が求められると同時に、例えば官民連携による共用化技術開発や大規模な試験サービスが不可欠になると考えられる。こうした技術開発や実用化試験を実施するためには、研究開発資金を確保する必要があり、米国の「周波数有効利用基金」に相当する、我が国の「電波利用料」を戦略的に活用していくことが適当であろう。
 我が国の電波利用料制度は、電波を利用し受益を受けた者が利用料を負担する、受益者負担に基づくものであり、免許人から徴収した電波利用料を、全ての免許人が電波妨害や電波干渉を受けることなく電波を利用できるようにするための事務費用や、電波の有効利用に資するために必要な研究開発等の費用に充てることにより、電波の利用環境の向上、最先端技術の導入による電波の利用機会を拡大など、電波の価値をさらに高め、免許人全体の受益を担保することに繋げている。
このことから、電波の利用機会を増やすための技術の開発に必要な資金を、「電波利用料」から戦略的に確保することが、受益者負担の理念に叶うだけでなく、日本が世界の最先端の無線技術開発競争に後れを取らないようにするためにも、必要不可欠であると考えられる。

【目次】

第1章 米国
1-1 電波利用ニーズ
1-1-1 世界のLTE市場をけん引する米国
1-1-2 非エンドユーザー向けサービス需要
1-2 周波数管理制度
1-2-1 周波数分配状況
1-2-2 周波数割当て
1-2-3 主要事業者の周波数保有状況
1-2-4 周波数戦略
1-3 電波利用料制度
1-3-1 行政手数料の目的
1-3-2 行政手数料の内訳
1-3-3 留保手数料の承認
1-3-4 2014年度の行政手数料予算見積り
1-3-5 申請手続き手数料
1-3-6 周波数オークション実績
1-3-7 オークション収入の使途
1-3-8 行政手数料の免除対象
1-3-9 電波利用料をめぐる議論
1-4 無線技術研究開発
1-4-1 電波関連の研究開発予算
1-4-2 周波数共用技術開発
1-4-3 政府による無線技術研究開発センターの設立
第2章 英国
2-1 電波利用ニーズ
2-2 周波数管理制度
2-2-1 周波数割当て
2-2-2 無線電信免許
2-2-3 周波数戦略
2-2-4 4G(800MHz/2.6GHz)オークション
2-2-5 周波数共用に向けた取組み
2-3 電波利用料制度
2-3-1 無線電信法免許料
2-3-2 スペクトラム・プライシングの枠組み見直し
2-3-3 完全市場価値に基づいた年間免許料
2-3-4 AIPの適用プロセス
2-3-5 AIPの適用拡大
2-3-6 AIPの導入効果
2-3-7 地上波放送へのAIPの適用可能性
2-3-8 コストベース料金の見直し
2-3-9 無線電信免許料の収入額
2-3-10 電波管理費用額
2-4 無線技術研究開発
2-4-1 英国の研究開発予算
2-4-2 5G技術の研究開発
第3章 フランス
3-1 電波政策の所轄機関
3-1-1 ARCEP
3-1-2 CSA
3-2 電波利用料制度
3-2-1 電波利用料体系を規定するデクレ
3-2-2 料金体系
3-2-3 陸上公衆移動通信網のための周波数以外の周波数使用料
3-2-4 陸上公衆移動通信網のための周波数以外の周波数管理料
3-2-5 陸上公衆移動通信網を運営する事業者に義務付けられる納付金
3-3 フランスの放送にかかる電波利用料の取扱い
3-3-1 映画、視聴覚、アニメーション産業の振興のための制度
3-3-2 テレビ局に対する課税、義務等
3-3-3 ビデオ流通に対する課税
3-4 総括
第4章 韓国
4-1 電波利用ニーズ
4-1-1 データ・トラフィックの拡大
4-1-2 携帯各社のLTE戦略
4-2 周波数管理制度
4-2-1 電波政策の所掌機関
4-2-2 周波数戦略
4-2-3 周波数割当て
4-2-4 周波数オークション
4-2-5 オークション収入の使途
4-3 電波利用料制度
4-3-1 電波使用料と減免対象
4-3-2 電波使用料収入額
4-3-3 電波政策所掌機関の予算額
4-3-4 新規事業への参入促進
4-3-5 電波利用料負担をめぐる論議
4-3-6 電波利用料関連収入の使途をめぐる議論
4-4 無線技術研究開発
4-4-1 放送通信発展基金の研究開発予算
4-4-2 朴槿恵政権の科学技術政策方針
第5章 日米英の無線技術の研究開発動向
5-1 日本の研究開発
5-1-1 研究開発体制
5-1-2 平成25年度研究開発投資予算
5-1-3 電波利用料からの研究財源
5-2 日本における電波の有効利用に関する研究開発状況
5-2-1 電波資源拡大のための研究開発(総務省)
5-2-2 周波数ひっ迫対策のための技術試験事務の実施(総務省)
5-2-3 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)(総務省)
5-2-4 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)1
5-2-5 独立行政法人電子航法研究所(ENRI)5
5-2-6 防衛省 技術研究本部(TRDI)6
5-2-7 その他7
5-3 米国の研究開発7
5-3-1 研究開発体制7
5-3-2 2014年度米国連邦政府の研究開発投資予算9
5-4 米国における無線通信技術・周波数有効利用に関する研究9
5-4-1 無線通信技術および周波数有効利用に関する研究開発状況9
5-4-2 NITRD(Networking and Information Technology R&D)プログラム2
5-4-3 国立科学財団(NSF)の研究開発プログラム5
5-4-4 国防総省国防高等研究計画局(DARPA)の研究開発プログラム7
5-5 英国の研究開発2
5-5-1 研究開発体制2
5-5-2 2011年度英国政府の研究開発投資予算3
5-6 英国における無線通信技術・周波数有効利用に関する研究3
5-6-1 EPSRC(The Engineering and Physical Sciences Research Council) プログラム3
5-6-2 TSB(Technology Strategy Board)プログラム5
5-6-3 HEFC(Higher Education Founding Council)プログラム6
5-6-4 英国通信庁(Office of Communications :Ofcom)の技術開発プログラム6
5-6-5 Surrey大学3
5-7 まとめ4
第6章 総括1
6-1 電波利用ニーズ1
6-2 周波数配分制度2
6-3 電波利用料制度3
6-4 無線技術研究開発5


【執筆分担】

飯塚 留美 電波利用調査部 研究主幹 (第1章、第2章、第6章)

湧口 清隆 相模女子大学 人間社会学部 社会マネジメント学科 教授 (第3章)

三澤 かおり 情報通信研究部 副主席研究員 (第4章)

甲田 正夫 元FMMC 研究主幹 (第5章)