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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
各報告書は、販売もしておりますので、ご希望の方はこちらにご連絡ください。
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2013.10.01

  • 最新研究
  • 坂本 博史
  • 平井 智尚
  • 七邊 信重

スマート端末時代におけるエンタメ・サービスの機能とその利活用に関する研究 ―ゲームを中心に―

本報告書の目的は、主に次の二点である。
① スマートフォンやタブレットのようなスマート端末が普及する時代に、エンターテ
イメント・サービス(以下、エンタメ・サービス)、とりわけゲームが、どのように、
またなぜ社会的・経済的役割を果たしうるかを解明する。
② 事業者が自社のビジネスにゲームを活用する方法を提案する。

 第1章では、スマート端末時代のエンタメ・サービス、とりわけゲーム・サービスの役割と、通信事業者が提供しうるサービスを検討している。まず、スマート端末の特徴に、高性能の演算処理・描画、大型液晶画面、汎用OSなどがあることを確認している。また、国内外でのスマート端末の急速な普及状況と、多くのユーザーがエンタメ、ゲーム・サービスを理由にスマート端末を購入している現状を論述している。
 次に、ゲームを「ルール」「結果」「プレイヤーの参加」「現実世界との関係」などの概念で定義し、スマート端末で遊ばれるコンピューターゲームの主な魅力が、ゲーム内チャレンジの解決がもたらす達成感と、ICTを介した他プレイヤーとの交流であることを明らかにしている。
 最後に、通信事業者が提供しうるゲーム・サービスとして、①フィーチャーフォン時代のゲーム遺産の活用、②プレイヤーが努力によって良い結果に到達でき、あまり多くのスキルがなくてもプレイできる、カジュアルなネットワークゲーム、③ユーザーの人生設計を支援するゲーム的サービス、の三つを提案している。

 第2章では、ソーシャルゲームを介したコミュニケーションの社会的効用と、ソーシャルゲームのプレイがICT社会に果たす貢献を検討している。まず、『ポケットモンスター』『モンスターハンター』『どうぶつの森』のような、対人コミュニケーションを促進するコンピューターゲームが1990年代以降に人気であることを説明している。
次に、SNS上で遊べるソーシャルゲームに注目している。ゲーム内でのユーザー同士の協力・対戦、ゲームへの参加・招待、ゲーム外でのWikiを介した交流に見られるように、プレイヤーはゲーム内外でコミュニケーションを行っているが、この他者との交流が動機になり、ゲームへののめりこみや課金が行われていることを明らかにしている。
最後に、社会共通の価値観が薄れ他者から承認を得ることが困難な時代に、ソーシャルゲームを介したコミュニケーションが、「善意」「社交」「承認」「文化」のような社会的効用を生んでいることを説明している。

 第3章では、スマート端末提供事業者のゲーム・サービス戦略を考察している。まず、モバイルサービス市場の発展が、移動体通信網、スマート端末、サービスあるいはアプリケーションという3要素の協働関係(エコシステム)に依存していることを論述している。
 次に、モバイル・エコシステムで競争優位を構築するための鍵がゲームの提供であることを指摘している。利用者からの高い需要と優れた収益性により、ゲームはモバイル・エコシステムの中核商品として位置づけられている。しかし、iOS、Android双方の陣営ともにゲーム提供に関する競争優位を確立できていない。一方、ソニーは、自社のスマート端末シリーズ上にゲーム提供に関するプラットフォームを実装し、販売チャネルを構築している。このスキームは、各端末事業者がゲーム市場での競争優位構築に苦慮する中で、注視すべき動向であると説明している。

 第4章では、ゲーム利活用の歴史と、なぜゲームが人間の合理性を高めるかを考察している。まず、ゲーム理論、ゲーミング・シミュレーション、シリアスゲームなどを挙げて、19世紀以降のゲーム利活用の歴史を論述している。次に、社会の仕組みの理解への動機づけを高めることや、当事者の役割やその意思決定と相互作用の結果の深い理解を生むことが、ゲームが社会問題の認識と解決に役立つ理由であることを説明している。
 最後に、近年注目を集めている概念である「ゲーミフィケーション」とその課題を解説している。現在、個人は目的、価値観、働き方を含む多様な生き方を許容されているが、一方でその将来は自分の能力や選択に係っている。現代社会では、人々の目的達成やコミュニケーションを支援するゲーム的サービス(合理性支援サービス)が求められていると、説明している。

第5章では、本報告書を総括し、スマート端末とゲーム・サービスの未来が予測されている。

【目次】

第1章 スマート端末時代のゲームと通信事業者の戦略
1 スマート端末とその普及
1-1 スマート端末の特徴
1-2 スマート端末の普及動向
2 スマート端末購入要因としてのエンターテイメントとゲーム
2-1 エンターテイメント
2-2 ゲーム
3 スマート端末でゲームが遊ばれる要因
3-1 ゲームの定義
3-2 コンピューターゲームの種類
3-3 コンピューターゲームの特徴
3-4 ゲームをプレイする理由/スマート端末でプレイする理由
3-5 ゲーム産業の未来
4 通信事業者のゲーム・サービス戦略
4-1 通信事業者のゲーム・サービス
4-2 「パズル&ドラゴンズ」に見る未来のスマート端末向けネットワークゲーム
5 まとめ
第2章 ソーシャルゲームとコミュニケーション
はじめに
1 ビデオゲームとコミュニケーション
2 ソーシャルゲームの設計とコミュニケーション
2-1 SNSとソーシャルゲーム
2-2 ソーシャルゲームへの参加と招待
2-3 ソーシャルゲームの外側における情報交換
3 ソーシャルゲームのプレイにおけるコミュニケーション
3-1 ソーシャルゲームユーザーの実態
3-2 ライトユーザーとコミュニケーション
3-3 ヘビーユーザーとコミュニケーション
4 ソーシャルゲームの社会的効用
第3章 ゲームによるモバイル・エコシステムの競争優位構築への展望
1 モバイル・エコシステムとは
2 競合する二つのモバイル・エコシステム:iOSとAndroid
3 モバイルゲームがゲーム市場の主流に
4 ゲームはエコシステムの収益性を高める商品
5 ゲーム市場でエコシステムの競争優位を確立することは難しい
6 既存のゲーム資源によるサブシステムで競争優位を構築できるか~ソニーの試み
第4章 ICTとゲーム利活用の未来――合理性支援サービスの可能性
1 ゲーム利活用の歴史
1-1 ボードゲームの教育利用(1800年代~)
1-2 ゲーム理論(1920年代~)
1-3 ゲーミング・シミュレーション(1950年代~)
1-4 エデュテイメント(1980年代~)
1-5 コンピューターゲームの教育利用(1980年代~)
1-6 シリアスゲーム(2000年代~)
2 ゲームが娯楽以外にも役立つ理由
3 ゲーミフィケーションと合理性支援サービス
4 まとめ
第5章 スマート端末とゲーム・サービスの未来(総論)
1 総括
2 スマート端末とゲーム・サービスの未来

【執筆担当】

・第1章、第4章、第5章
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 研究員 七邊信重

・第2章
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 研究員 平井智尚

・第3章
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 研究員 坂本博史