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リサーチレポート

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2020.12.01

  • リサーチレポート
  • 入江 晃史

英国におけるブロードバンド・ユニバーサルサービス(後編)

一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)
ロンドン事務所 所長 入江 晃史

「ユニバーサルサービス」は、電気通信や電気・ガス・水道などの公益サービスで議論される概念である。これは、現在の社会的・経済的条件の下で不可欠であると考えられる基本的サービスを、すべての人に、求めに応じて、手頃な価格で提供することを確保するシステムのことを指し、セーフティネットとしての役割を期待されている。
英国の電気通信分野におけるユニバーサルサービスは、2002年に策定されたEUのユニバーサルサービス指令に基づくものであり、BTなどのユニバーサルサービス提供事業者(USP)は、基本的なインターネットアクセスを含む固定ネットワークへの接続サービスの提供(音声通話とナローバンド(ダイアルアップ)インターネット(28kbps))など を義務付けられてきた。そして、2020年3月から は、制度上ナローバンドだけではなく、ブロードバンドもユニバーサルサービスの範囲に含まれている。英国に住んでいる人は誰でも、手頃な価格でブロードバンド(ダウンロード速度10Mbps。アップロード速度1Mbps。毎月のデータ許容量100GB。その他にも条件があるが、後述)をBT(やKCOM)に申請することで利用できるようになった。
ユニバーサルサービスは、現在の社会的・経済的条件の下で不可欠であると考えられる基本的サービスであるから、当然、時代とともにその内容は変わりゆく性質のものである。最低限のサービスとして、例えば10Mbpsが妥当なのかどうか、毎月のデータ許容量が100GBで十分なのかといった論点は不断に議論されている。
ロンドン事務所はこれまで、このブロードバンドのユニバーサルサービス化に関する英国の議論を追いかけてきた 。2020年3月にブロードバンド・ユニバーサルサービスが開始され、これまでの取組に一区切りついたため、本稿では、英国のブロードバンド・ユニバーサルサービス制度化までの経緯と最近の動向を、前編と後編に分けて概説することとしたい。
本稿は後編となる。USPの指定、USPに対する補償など、USPを中心に概説する。また、ディーセント・ブロードバンドの最新の動向を紹介する。ブロードバンド・ユニバーサルサービス制度化の経緯については、前編をご参照いただきたい。

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