有料動画配信によるスポーツ放映が定着している欧米では、「海賊版スポーツ配信(以下、海賊版配信)」や「違法オンラインスポーツ賭博(以下、違法賭博)」の利用拡大が社会的課題となっている。日本でもスポーツ放映は無料放送から有料動画配信へと移行しつつあり、同様の問題が顕在化する可能性がある。本調査研究では、日本の今後の議論に資する基礎資料の整備を目的として、欧米の市場・政策動向と日本の現況を整理・分析した。主な調査研究成果は以下のとおりである。
<欧米の市場動向>
正規視聴方法の煩雑化や費用負担の増大を背景に、スポーツファンの相当割合が海賊版配信を利用しているとの報告がある。また、海賊版配信事業者と違法賭博事業者が「ダーク・アフィリエイト」により連携し、海賊版配信利用者を違法賭博へ誘導する構造も確認された。この構造は利用者を違法なエコシステム内に囲い込み、個人情報漏えい、不正資金流出、賭博依存症の助長といった社会経済的リスクを生じさせる。
<欧米の政策動向>
海賊版配信対策として、EUでライブ・サイトブロッキング差止命令を可能とする法整備が進められているほか、米国でもサイトブロッキングの導入を盛り込んだ法案及び法案素案が公表されている。いずれもリアルタイム性の高い海賊版配信への迅速な対応を重視する動きである。これに対し、違法賭博対策としては、英国で賭博委員会にサイトブロッキング差止命令の請求権を付与する法案が審議されている。また米国では、賭博合法州の多くが賭博免許事業者に対して、州外からのアクセスをジオブロッキングまたはジオフェンシングにより制限することを義務付けている。
<日本の現況と展望>
2025年7月に実施したアンケート調査では、日本でも海賊版配信と違法賭博の利用者が一定程度存在し、海賊版配信利用者ほど違法賭博を行う傾向が確認された。今後、スポーツ放映の有料化が進展すれば、違法サービスの利用が拡大する可能性がある。そのため、海賊版配信対策ではライブ配信への実効的対応を、違法賭博対策ではダーク・アフィリエイトの遮断を重要課題として検討する必要がある。また、「安全にスポーツを視聴できる環境」の確保を含め、スポーツのユニバーサルアクセスの在り方を再考することも求められる。
(報告書内容)
第1章 問題意識と目的
第2章 スポーツ配信とオンラインスポーツ賭博
第3章 海賊版スポーツ配信と違法オンラインスポーツ賭博
第4章 欧米における海賊版スポーツ配信への司法的措置
第5章 欧米における違法オンラインスポーツ賭博への司法的措置
第6章 日本の現況と展望
参考資料
付録(アンケート調査結果)
参考文献
(執筆者)
米谷 南海(調査研究部 上級研究員)
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