[HTML]
H1

調査研究成果

お知らせカテゴリー表示
リサーチャー名選択
お知らせ表示

2025.04.14

  • 最新研究
  • 上田 昌史

東アジア等の電子政府を中心としたGovTechの事例分析と日本への示唆

 本報告書は、東アジアにおける先進的な電子政府やGovTechの取組みを分析し、我が国の電子政府に向けた示唆を得ることを目的としている。韓国や台湾は各種電子政府ランキングで比較的高評価を受けており、インフラ基盤や法制度に我が国と一定の類似性がみられ、参考になる点が多い。特に利用者利便性向上や市場拡大に寄与した事例を中心に調査した。
 韓国では、長年の法整備と計画的な推進により、電子政府を効率的かつ利便性の高い形で展開してきた。また、すでに普及しているサービス提供事業者との積極的な連携に官民連携の特徴があり、スピーディかつ効率的な電子政府サービスの提供が行われている。
 また、韓国では「政府24」による電子政府のワンストップ化や利用者による評価制度、ソウル市に見られるライブデータを活用した電子政府サービス対象の拡大といった電子政府の利便性向上や市場拡大に向けた政府の積極的な取組みが見られる。
 本報告書で取り上げた官民連携による利便性向上や市場拡大に関する事例は、①既存の電子政府基盤と民間サービスを連携による迅速な給付金給付、②政府保有データの開放によるCivic Techによる民間サービスの拡大、③政府データを活用した移動体通信大手3社の「PASS」アプリによるスマートフォン共通認証基盤を官民で利用といったものがある。
 台湾では、これまでの電子政府基盤を活かしてコロナ禍では、電子政府を活かして行政サービスを次々と充実させ、国民への迅速な支援を実現した。台湾の電子政府は、行政サービスの一部を民間サービスへ移行させる仕組みを整えており、効率性と柔軟性のある行政運営が行われている。
 また、台湾では「デジタルイノベーション重要インフラプログラム(デジタル遷都計画)」により、システムの標準化、オープン化、開発者コミュニティや同士国との連携等を軸とした次世代電子政府の大胆な改革が進行中である。
 本報告書で取り上げた具体的な利便性向上や市場拡大に関する事例は、①「我的E政府」による電子政府のワンストップ化とシンプルで分かりやすいユーザ・インタフェイス(UI)、②一定以上の賛同が得られた民意を行政に反映させる「Join」、③政府サービスを民間サービスに移行させる仕組みといったものがある。
 韓国や台湾の事例から、我が国の電子政府のさらなる発展のために、次のような示唆が得られた。
 利便性向上については、①統一ポータル化、もしくはログイン情報を活用した各システム間の連携等を導入、②利用者アンケート等を利用したサービス改善を行うべきである。
 市場や民間サービスの拡大については、①政府保有データの更なる提供拡大、②政府データの利用者の要望を反映した形でのデータ提供方法や対象の見直しを行うべきである。
 このような改革を行うことで、我が国の電子政府市場が、国際的な市場拡大のペース程度に拡大するようになれば、年間2,000億円程度の市場拡大が見込まれる。

(報告書内容)
第1章 我が国における電子政府
1-1 調査の背景
1-2 我が国における電子政府の現状
第2章 韓国における電子政府
2-1 韓国の電子政府
2-2 韓国における電子政府の推進
2-3 ソウル市における電子政府の推進
2-4 韓国の官民連携
第3章 台湾における電子政府
3-1 台湾における電子政府の推進
3-2 台湾における官民連携
3-3 次世代電子政府計画
第4章 我が国の電子政府への示唆と考察
4-1 韓国と台湾の調査のまとめ
4-2 我が国への示唆と考察

(執筆者)
上田 昌史 (調査研究部 上級研究員)

「リサーチャーの紹介」はこちら