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2020.10.01

  • 最新研究
  • 藍沢 志津
  • 田中 絵麻

産学官連携によるAI人材育成の国際動向

  本報告書では、ソサエティ5.0の実現に向け「AI時代に対応した人材育成と最適活用」を目指す日本への示唆を導出することを目的として、米国、英国、シンガポール、インドの四か国を対象として、先進的なAI人材育成の取組み事例に関する調査・分析を実施した。

 その結果、いずれの国も、AI分野の将来性を鑑み、行政、産業界、学界が互いに協調・連携し合い、パートナーシップに基づく新たなAI人材育成の取組みを急ピッチで進めていた。各国が置かれた社会・経済・政治の違いを反映し、労働力のどの層に力点を置くかという点には特色がみられた。その一方で、AI人材育成のベースとなる国民全体のデジタル・リテラシーの強化などは共通するとともに、特に有力大学を中心とする先端AI人材の育成は、企業との連携を一層強化していた。

 また、いずれの国においても、これまで見過ごされてきた分野の人材に焦点を当てる取組みや、教材の多言語化の推進、多様性や包摂性を重視する等、日本と同じくGPAI(AIに関するグローバルパートナーシップ)参加国として責任あるAIによる未来社会像を具現化する試みが確認できた。

 さらに、想定していた以上にAIの社会実装が進展する状況を踏まえ、「AIを作る人材」だけでなく、「AIを使う人材」の裾野を拡大する方向性が確認できた。人口減少・少子高齢化という社会課題を抱える日本においても、文系人材の育成・リカレント(学びなおし)教育が推進されているところであり、成人を対象としてAI人材のボリュームを確保していく取組みは今後ますます重要になると考えられる。その一方で、バックグラウンドを問わずに幅広く人材を募集しつつ短期間で資格を取得できる枠組みの導入や、AIが楽しくかつ柔軟に学べる教材の促進等、柔軟性や可能性を拡げるAI人材育成の動きは、教育や学びの本質を確認する上で重要な示唆に富むものといえる。

 現在、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の歴史的な低迷のなか、各国のAI人材育成の取組みも、オンライン教育へのシフト、医療やヘルスケア分野の強化等、新しい方向性を見出している。さらに、次世代コンピューティングの時代を視野に入れ、量子コンピューティング人材の育成も開始されており、今後、さらなる最先端人材の育成をどう進めていくかも注視していく必要がある。

(執筆者)
藍澤 志津(ICT リサーチ&コンサルティング部 シニア・リサーチャー) 序章、第1 章、
第3 章、第5章、終章担当
田中 絵麻(ICT リサーチ&コンサルティング部 客員研究員) 第2章、第4 章、終章
【米国】【シンガポール】担当