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2018.10.01

  • 最新研究
  • 坂本 博史
  • 田中 絵麻
  • 平井 智尚

社会のスマート化に向けた公共データ活用にかかる米国と日本の取り組み

本報告書では、米国と日本における公共データ活用について、オープンデータ政策とスマートシティ政策に着目し、両国の取り組みについて報告した。なお、日本では、国の施策としてのスマートシティ政策についてはモデル都市プロジェクトの公募が開始された段階にあることから、主にオープンデータの取り組みについて取り上げた。

米国の調査結果として、クリントン政権以前の公共データにかかる制度整備、クリントン政権とブッシュ政権における電子政府化と情報公開の取り組みという経緯を踏まえて、オバマ政権のオープンデータ政策と、オバマ政権とトランプ政権におけるスマートシティ政策の展開と変化を概観した。米国では、従来から公共データのデジタル化、情報公開、電子政府整備とそのセキュリティ対策が進められてきたという公共データ活用の制度的基盤の上で、連邦政府主導により、外部から効率的に利用しやすいオープンデータの整備が進められた。また、米国のスマートシティ政策は、産官学連携型により、多様な領域におけるデータ・AI・IoT の活用が目指されている。また、米国におけるオープンデータは、連邦政府のデータセットの公開が主軸となっており、州や自治体・都市レベルでの取り組み度合いには、地域により差があることを示した。オープンデータとスマートシティの両方での先進的な取り組み例として、ニューヨーク市の事例を取り上げ、同市の市⻑のイニシアティブにより、ICT分野のスタートアップの育成と社会・経済の活性化に成功していることを示した。

日本におけるオープンデータ政策については、地方公共団体によるオープンデータの取り組みに着目し、これまでの地域情報化政策を振り返りながら、地方公共団体によるオープンデータの取り組みが地域情報化に資する可能性を検討した。従来の地域情報化政策に対しては、通信基盤整備の重視、地域のニーズにそぐわない政策、地方の主体性の乏しさなどの問題が指摘されてきた。こうした指摘をふまえたうえで、本章では「官⺠の連携」や「地域のニーズ」と結びついた地方公共団体によるオープンデータの取り組みに着目し、従来指摘されてきた地域情報化の課題を乗り越える可能性を見出した。また、日本のオープンデータ公開状況を地方自治体の階層分類から考察し、高い許認可権限に基づき行政情報を数多く保有する都道府県や政令指定都市ではオープンデータの公開が進む一方で、保有する行政情報の少ない特別区・中核市以降の市町村では、その自治体の人口、経済規模に関わらず、オープンデータの公開が進展していない状況にあることを指摘した。

米国と日本の取り組みを照らし合わせ、公共データ活用のためには、①中央政府・地方自治体の両方で行政府におけるデジタル・データの活用基盤を整備し、モバイル化・クラウド化・AI 対応等のオープンデータ化を行い、外部から公共データ活用をしやすくする取り組みと、②産官学連携プロジェクトやデータ活用のスタートアップ支援により、地域ニーズ・課題に合致したソリューションの導入を推進するスマートシティ施策の二つの取り組みを推進することが有益だと思われるとまとめた。