ICTの利用をめぐる格差、いわゆる「デジタル・ディバイド」は、かねてより課題として認識されてきた。ICTの利用は、生活の向上や雇用機会の獲得といった恩恵を、その利用者にもたらすことが期待される。情報社会の進展という点でICTの利用をめぐる格差の解消は重要である。
デジタル・ディバイドは、先進国と途上国間の格差や、国内における地域間格差に焦点が当たるが、社会的・経済的な要因に基づいた格差も見過ごしてはならない。その一つとして「ジェンダー」(社会的性差)に基づくデジタル・ディバイドが挙げられる。国際電気通信連合(ITU)は、ICTの利用をめぐるジェンダー格差の解消を重要課題と位置づけ、2009年よりジェンダーに基づくデジタル・ディバイドに関連するデータを収集している。
インターネット利用をめぐる男女間の格差
地域 |
2013年格差(%) |
2015年格差(%) |
先進国 |
6.3 |
5.4 |
途上国 |
15.6 |
15.4 |
後発開発途上国(LDC) |
29.9 |
28.9 |
全世界 |
11.0 |
11.1 |
地域 |
2013年格差(%) |
2015年格差(%) |
アフリカ |
20.7 |
20.5 |
アラブ諸国 |
15.5 |
14.4 |
アジア大洋州 |
17.7 |
17.6 |
ロシア・CIS諸国 |
7.5 |
7.0 |
欧州 |
9.4 |
8.2 |
米州(南北アメリカ) |
-0.4 |
-0.7 |
出所:ITU「Measuring the Information Society Report 2015」
2013年と2015年の数値を比較してみると、インターネット利用をめぐる男女間の格差は全体的には減少していることがわかる。しかし、依然としてICT利用をめぐるジェンダー格差は残っており、とりわけ後発開発途上国(Least developed country:LDC)、およびLDCの該当国を含むアフリカやアジアで大きな格差がある。また、女性の自由や権利が制限されている中東地域でも男女間の格差が目立つ結果となっている。
ITUは、ジェンダーを要因とするデジタル・ディバイドの解消に向けて、2015年12月、デジタル分野におけるジェンダー格差の解消を目的とするアクションプランを公表した。ITUは、アクションプランを通じてデジタル分野におけるジェンダー格差の解消を図り、インターネット利用における男女間の格差を2020年までに解消することを目標として掲げている。