英国のEveryone TVは2026年8月26日、オリバー・アンド・オールバウム・アソシエーツ(Oliver & Ohlbaum Associates:O&O)に委託して作成した報告書「PSBと制作基盤:何が危機に瀕しているのか(PSBs AND THE PRODUCTION PIPELINE: WHAT’S AT STAKE?)」を公表した(注1)。同報告書は、公共サービス放送事業者(Public Service Broadcaster:PSB)が2024年の英国オリジナルコンテンツ投資の71%、2025年のオリジナル番組放送時間の85%を占めるなど、英国テレビ産業の制作基盤を支える中核的な役割を果たしていると指摘した。
報告書によると、PSBは過去10年間に600超の独立制作レーベルへ番組制作を発注してきた。2025年に発注を受けた235の独立制作グループの76%は小規模事業者であり、小規模・零細プロデューサー向け投資額は約3億6,500万GBP(約696億円)に達した。また、過去10年以内に設立され、PSBから発注を受けた制作レーベルは2021~2025年の間に合計31億GBP(約5,920億円)の収益を生み出した。そのうち79社は年間売上高1,000万GBP(約19億円)超へと成長した。
制作面では、2025年のPSBによる外部制作ドラマ発注の63%が新規の知的財産(IP)に基づく作品であり、総計1,100時間超、3億5,000万GBP(約668億円)規模の新規IP制作が発注された。また、PSBは見習い制度や業界研修基金を通じて人材育成を支援している。制作時間の63%はロンドン以外の地域で行われており、地域経済の活性化や制作能力の維持にも貢献している。2024/25年度の英国テレビ番組輸出額は20億2,000万GBP(約3,840億円)と前年度比10.9%増加し、PSB作品は200超の市場で販売された。
一方で報告書は、制作費の高騰や第三者資金調達環境の悪化により、PSBの収益力や発注予算が圧迫されていると警告した。今後、発注の減少がさらに進んだ場合、新規制作会社の参入機会の縮小に加え、地域制作や人材育成の停滞を招く恐れがあるとしている。また、知的財産権や収益の国外流出につながる可能性も指摘している。このため政府、PSB、制作業界が連携し、ストリーミング時代においても公共サービス放送制度の基盤を維持・強化していく必要があると提言している。
(注1)
https://www.everyonetv.co.uk/news/press-release/public-service-broadcasters-report-production