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2026.06

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国立物理学研究所とボーダフォン、地上型時刻インフラでGNSS依存低減へ
国立物理学研究所(NPL)とボーダフォンは、GPSなどの衛星測位システム(GNSS)に依存しない地上型時刻供給の実証試験を完了した。光ファイバを活用した時刻配信サービス「NPLTime」により、英国標準時UTC(NPL)にトレーサブルな地上基準信号の提供を検証し、40ナノ秒以内の精度維持を目標とする通信向けサービスの実用化に前進した。この取組みにより、ボーダフォンの英国事業ボーダフォンスリーは、国家計量標準機関(NMI)が提供する地上時刻源を通信ネットワークの時刻基盤として検証した英国初の移動体通信事業者となった。

通信業界ではこれまで、正確な時刻同期のためにGNSSが広く利用されてきた。しかし、5Gおよび将来の6Gネットワークでは、基地局間でマイクロ秒以下の高精度同期が求められ、より高い信頼性と耐障害性を備えた時刻供給が必要とされている。ボーダフォンは、5G SAネットワークの展開やネットワーク高度化を進める中で、GNSSへの依存低減を重要課題と位置付けている。今回のNPLとの取組みはその一環であり、同社の約110億ポンド(約2兆3,540億円)規模のネットワーク投資計画(2030年に人口カバー率99%)のレジリエンス強化に寄与する。

本プロジェクトは、NPLが主導する英国の国家プログラム「ナショナル・タイミング・センター(NTC)」とも連携している。NTCは、光ファイバを中心とした時刻配信に加え、複数の技術を組み合わせた分散型の時刻インフラの構築を目指している。これにより、通信や金融など重要インフラに対する時刻供給の信頼性と継続性を高めることが期待されている。

こうした取組みの背景には、GNSSの脆弱性に対する認識の高まりがある。通信分野では、衛星ベースの単一時刻源への依存はリスクとされつつあり、複数の時刻源を組み合わせたレジリエントな構成への移行が検討されている。2026年には業界団体ATISが、GNSS依存が通信インフラのリスクとなり得ると指摘し、代替・補完手段の導入を含めた時刻アーキテクチャの強化を提言している。

こうした時刻インフラの分散化は世界的な潮流とも一致する。韓国はGPS妨害への対応としてeLoran(強化型ロラン)を導入し、すでに運用段階にあるほか、同国主導のもと英国やフランスとともに国際標準化に向けた議論が進められている。また中国も、衛星測位システム「北斗(BeiDou)」に加え、地上系を含む多層型PNT(測位・航法・時刻)インフラの構築を進めている。欧州においても、英国とフランスが地上型PNT技術での連携を強化しており、レジリエントな時刻基盤の構築に向けた取組みが進みつつある。

GNSSを単一の時刻源とする従来の構造から、光ファイバ、地上無線、衛星などを組み合わせた多層型の時刻インフラ(PNT)への移行が進みつつある。今回のNPLとボーダフォンの取組みは、その実装に向けた具体的な一歩であり、今後の通信インフラの方向性を示す事例と位置づけられる。