英国の文化メディアスポーツ省(DCMS)は2026年6月23日、「Watch This Space: A New Strategic Direction for UK Media」と題するメディア戦略のグリーンペーパーを公表し、地上デジタル放送(DTT)からインターネット配信への移行の方向性を示した(注1)。DTTの終了時期については2034年または2044年といった将来の目安が示されているものの、現時点では検討段階にあり、最終的な判断は今後の議論に委ねられている。
この背景には視聴スタイルの急速な変化がある。人々は従来のテレビ放送よりもオンラインでコンテンツを視聴する傾向を強めており、とりわけ若年層では動画共有サービスが主流となっている。こうした状況を踏まえ、政府は従来の「放送」を維持すること自体よりも、デジタル環境に適応した公共サービスメディアのあり方の再構築を重視している。
具体的には、BBCをはじめとする公共サービス放送事業者を、リニア放送中心の存在から、プラットフォーム時代に対応した「公共サービスメディア」へと進化させることが重要と位置付けられている。そのため、オンラインサービスや接続機器を前提とした配信環境の整備が重視されており、テレビの価値は電波による伝送ではなく、サービスとしての提供形態へと移行しつつある。
その一例として、BBCと商業放送各社が共同で提供する「Freely」のようなサービスが挙げられる。これはアンテナや衛星放送に依存せず、ブロードバンドを通じてライブおよびオンデマンドのテレビ視聴を可能にするものであり、インターネット中心の視聴環境への移行を象徴している。
さらに、本グリーンペーパーでは特定の放送技術や規格には重点が置かれていない。代わりに、視聴者がコンテンツをどのように発見し、利用するかという点が重視されている。すなわち、今後の課題は配信インフラそのものよりも、コンテンツの「発見性」やナビゲーション、そして信頼できる公共サービスとしての位置付けにあるとされている。
英国政府は、従来のチャンネルの維持よりも、多様なプラットフォーム上で公共サービスメディアを確実に届けることを重視しており、テレビの本質が「放送」から「サービス」へと移行していることを明確に示している。
なお、本提案については2026年8月31日まで意見募集が行われ、その結果を踏まえて最終的な政策方針が策定される予定である。
(注1)
https://www.gov.uk/government/consultations/watch-this-space-a-new-strategic-direction-for-uk-media-green-paper-and-public-consultation