欧州委員会は6月3日、域内のデジタル基盤とデジタル主権の強化を目的とした「欧州技術主権パッケージ」を発表した。同施策には、重要技術における海外ベンダーへの依存度を引き下げ、欧州経済のレジリエンスを底上げする狙いがある。
同パッケージを構成する主要施策は以下の四つである。
- 「半導体法2.0(Chips Act 2.0)」:2023年制定の「半導体法」を改正し、AI向け次世代チップの設計・製造基盤の整備や許認可プロセスの迅速化を進める。また、パートナーとの連携強化や、主要な半導体産業拠点への「エクセレンス・ラベル」付与などを実施する。
- 「クラウド・AI開発法(Cloud and AI Development Act:CADA)」:EUがAIの分野で世界的リーダーになることを目標とする「AI大陸行動計画」の中核を成し、研究開発の促進や、今後5~7年間でデータセンターの処理能力を最低3倍に拡張することを目指すほか、データセンターの設置認可の簡素化・迅速化、クラウド・AI主権の共通評価枠組みの導入を行い、第三国からの独立性とソフトウェアサプライチェーンにおける透明性を確保する。
- 「オープンソース戦略」:欧州内の開発者コミュニティを支援・活用し、セキュリティやAIなどの戦略的分野でのオープンソース活用を推進する。行政機関での積極的なオープンソース導入も進める。
- 「エネルギー分野におけるデジタル化とAIのための戦略ロードマップ」:データセンターを持続可能な形で電力網へ組み込むための指針を提供する。送電網のスマート化に向けたAI導入やスマートメーターの普及を進め、エネルギー分野向けの主権的かつ安全な欧州産AIモデルの構築や、国境を越えたデータ共有の円滑化を図る。
なお、同パッケージに対する民間の反応は二分しており、恩恵を受ける立場にある欧州の通信・デジタル関連団体は前向きな姿勢を見せる一方、締め出される可能性の高い欧州外の業界団体からは強い懸念が寄せられた。とりわけ、米国の主要IT企業が所属するコンピュータ通信産業協会(CCIA)は、「クラウド・AI開発法」について、特定企業の締め出しにつながる差別的かつ保護主義的な内容であり、深刻な市場の分断を招くと警告している。