欧州委員会は1月21日、域内の電気通信規制枠組を刷新する「デジタルネットワーク法(Digital Networks Act:DNA)」案を公表した。
DNAは、従来の電気通信規制枠組である「欧州電子通信コード(EECC)」を改正し、AIやクラウド等の革新的技術の前提となる高度な通信網への投資促進を目的とするもの。同法案は、加盟国における国内法化が必要な指令から、域内に直接適用される規則へと移行することで、単一市場の強化を目指す。2023年に欧州委員会のブルトン委員(当時)が構想を提示して以降、策定に向けた議論が続けられていた。同法案の主な内容は以下のとおり。
- 単一市場の強化:通信事業者がいずれかの加盟国にて登録すればEU全域で事業展開が可能となる仕組みの導入、EUレベルの周波数割当枠組の構築による汎欧州的衛星通信サービスの創出、事業者への長期免許付与や免許を原則延長可能とするなどの規制の一貫性向上、「使用または共有」原則による効率的な周波数利用の促進などが提案されている。
- 高度なコネクティビティネットワークへの移行:2030年から2035年にかけて銅回線を段階的に廃止するため、加盟国に対して2029年までに移行計画提出を義務付ける。
- 簡素化と投資促進:規制枠組を近代化し、企業の行政負担と報告義務を軽減する。
- 安全で強靭なコネクティビティ:接続エコシステムにおける依存関係を制限し、EUレベルでの協力を促進することで、ネットワークのセキュリティとレジリエンスを強化。自然災害や外国からの干渉など、リスクの高まりに対処するためのEUレベルの準備計画を導入する。
- ネット中立性の保護:革新的サービスのためのオープンインターネットルールを明確にし、法的確実性を高めるメカニズムと自主的なエコシステム協力メカニズムを導入する。
同法案の公表後は、電気通信及びテック業界からは賛否が寄せられている。
欧州の主要な電気通信事業者を代表するコネクトヨーロッパは、同法案の周波数政策部分は支持しつつも、残りは現状維持であり、投資促進策が不十分であると指摘。光ファイバーの普及促進や、規制の簡素化、データトラフィック市場における巨大テック企業と交渉するための強制的な紛争解決メカニズムの導入を含む、より大胆な提案を求めた。
一方、米国テック企業等が加盟するコンピュータ通信産業協会(CCIA)は、法案に含まれる自主的な紛争解決メカニズムが、ネットワーク使用料の実質的な復活につながるとして強く反発。また、同法案におけるコンテンツデリバリネットワークやクラウド事業者に対する規制拡大も含め、ネット中立性やデジタルエコシステムへの悪影響を懸念している。
このほか、新規事業者の団体である欧州競争電気通信事業者協会(ECTA)や、各国の規制当局を代表するBERECは、事前規制が維持された点を評価。また、光ファイバー推進団体のFTTH Council Europeは、銅線網の廃止を歓迎し、投資の追い風になると評価した。
放送分野では、欧州の公共放送を中心に構成される欧州放送事業者連合(EBU)が、同法案の公的サービスメディアに関する規定について、おおむね満足とコメント。一方で、オンラインコンテンツへのアクセス料金が、自主的な紛争解決メカニズムによる事業者間の協定ベースで定められるという原則には、放送番組一般のストリーミング視聴料金軽減の可能性があるものの、公的サービスコンテンツへのアクセスに悪影響を及ぼす危険性も排除できないとしている。