2025.09
スイス、郵便サービスのデジタル化対応へ法制改正方針を決定―2030年施行予定

スイス連邦内閣は2025年8月13日、郵便法制の包括的改正に向けた基本方針を決定した。
郵便法改正の基本方針は二つの柱から成る。第一に、十分かつ廉価なユニバーサルサービスの維持である。ユニバーサルサービスの範囲と品質は当面削減されず、改正施行時期(おおむね2030年)には現行の提供内容と2026年までに規則レベルで前倒し導入される措置を含む。将来的な需要動向にかかわらず、スイス・ポストが必ず提供しなければならない最低限のユニバーサルサービスの範囲も定められる。
第二に、将来のニーズへの柔軟な対応の確保である。需要減少の進行に応じてユニバーサルサービスを調整できる仕組みが盛り込まれ、一定の閾値に達した場合、スイス・ポストは最低限の供給範囲を遵守しつつ、ユニバーサルサービスの調整を申請できるようになる。
また、郵便組織法の改正も決定された。スイス・ポストがユニバーサルサービス以外の事業活動を拡大していることに対する議会や経済界からの反発を受け、企業目的を明確化し、逸脱を審査する法的救済手段を導入する。
新法の核となる要素の一つは、物理的サービスとデジタルサービスの両方がユニバーサルサービスの範囲となることである。これにより、スイス・ポストは需要減少時に従来の物理的サービスを縮小する一方で、新しいデジタル郵便商品を開発できるようになる。
具体的な変更として、来年から郵便・新聞・小包の送達日数達成率の目標値が90%に引き下げられる(現在は書状97%、小包・新聞95%)。さらに、代替的配達オプションの提供を条件に、最も近い集落から2分以上離れた世帯への戸口配達を中止できるようになる。この措置は主に農村部やアルプス地方の約2%の世帯に影響する可能性がある。
書状と小包を週5日配達する基本的な郵便サービス(ユニバーサルサービス)は「必要とされる限り維持」され、2030年より前に大きな変更は予定されていない。スイス・ポストはこの柔軟化計画を歓迎しており、営業経費削減と新しいデジタル商品提供を可能にするとしている。