2025.09
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EU「デジタルネットワーク法案」へのネットワーク利用料の導入断念と公開諮問に係る関連動向

EUと米国は8月21日、両国間の貿易協定に係る共同声明を公表。デジタル分野の貿易障壁解消に係る項目において、両国は不当なデジタル分野の貿易障壁に対処することを約束し、加えてEUはネットワーク利用料を導入しないことを確認した。
現在検討中の「デジタルネットワーク法(DNA)」案に盛り込まれる可能性があったネットワーク利用料は、欧州の大手通信事業者が通信ネットワーク投資コストにおける「公正な負担」をコンテンツプロバイダ等に求める主張から出てきたもので、米国中心に大手IT企業は強く反対していた。共同声明の直前となる同月8日にも、Amazon.comのクラウド事業部門であるアマゾンウェブサービス(AWS)が、実質的なネットワーク利用料の徴収が可能になるとの懸念から、デジタルネットワーク法案へのIP相互接続に関する紛争解決メカニズムの導入に反対する意見を公表していた。
コンピュータ/通信業界団体のCCIAは、共同声明と同日、ネットワーク利用料の導入断念を歓迎する意見を公表。同貿易協定をデジタル分野の貿易障壁を解消する契機として評価している。
また、デジタルネットワーク法案については、今年7月11日まで1か月間の公開諮問を実施。欧州電気通信事業者協会(コネクトヨーロッパ)は、同法案を支持し、通信規制枠組みの簡素化、卸売アクセスにおける事後規制への移行及び競争力のある公正な事業環境が、最優先事項であると回答した。一方、ボーダフォンは、固定通信分野で支配的地位にある旧国営事業者への事前規制の緩和を批判し、市場における健全な競争のために事前規制の継続を主張。欧州競争事業者協会(ECTA)も、事前規制撤廃は、市場支配的でない事業者が光ファイバのみならず、5G/6G、クラウド/エッジコンピューティング、AI等に投資する余力を奪うものだとしている。
この他にも、欧州放送連合(European Broadcasting Union:EBU)は7月15日、デジタルネットワーク法案に対し、放送事業に対する一連のセーフガード措置を設けることを提案。情報入手手段の多様化の中で、正確で偏見のない情報源としての放送サービスへのアクセスの容易化は不可欠であるとしている。