2025.05
ロイヤルメール、EPグループによる買収が完了
チェコの実業家ダニエル・クレティンスキー氏率いるEPグループによる英郵便事業体のロイヤルメールの買収が完了した。
英国の近代的な郵便制度は1840年にローランド・ヒル卿によって創設された。しかし、ロイヤルメールは1516年に王室郵便制度として設立され、1635年にチャールズ一世により一般利用が許可された500年余りの歴史を持つ。同社は、公社や株式会社など組織の形態は変えつつも英国政府に保有されてきたが、2013年の民営化でロンドン証券取引所に上場を果たし、2015年には、政府は保有するロイヤルメール株式を完全売却した。今回のEPグループによる買収で、ロイヤルメールの親会社のインターナショナル・ディストリビューション・サービシズ(IDS)は、2025年6月2日に上場廃止となり、その後、非公開有限会社として再登録される予定という。
このため、IDSは2024-25年度(2025年3月30日までの1年間)の通期業績速報は行わず、2025年夏に同年度の年次報告書と決算短信を公開するとしている。
今回の買収については、2024年5月29日、既にVESAエクイティ(EPグループ関連会社。クレティンスキー氏が取締役会長兼CEOを務める投資部門が100%所有している)が保有するIDSの株式を除き、Bidco Limited(EPグループとJ&T(※クレティンスキー氏の長年のパートナーであるスロバキアの投資家パトリック・トカチ氏の投資グループ)が間接的に所有する新設会社)がIDSの発行済みおよび発行予定の株式資本のすべてを取得することが提案されていた。
2025年4月30日、BidcoはVESAからの株式も合わせ、IDSの発行済み株式資本の約80.06%を取得し、EPグループは買収計画が株主によって承認されたと発表した。
この買収は、2024年12月16日に英政府から買収を承認する方針が示され、2025年1月14日には、欧州委員会(EC)により、「両社が活動する市場における競争への影響は限定的であるため、この取引による競争上の懸念は生じない」として承認を受けた。
一方、英国の重要なサービスが外国資本の手に渡ることには、懸念の声が上がっていた。政府はこれについて、EPグループは「<ロイヤルメール>ブランドを保護すること」「IDSが英国に本拠を置く納税者であり続けることを保証するため、政府がIDSの<黄金株(拒否権付種類株式)>を保持すること」「GLSとロイヤルメールの支配権を3年間変更しないこと」など、一連の法的拘束力のある約束をしたと説明。さらに、EPグループは、郵便労組と結んだ新たな協定を遵守し、「全国一律料金」のサービスを維持し、ファーストクラス郵便物を週6日配達することを約束した。
レイノルズ民間企業相は2024年12月に、「数千人の雇用を守り、ロイヤルメールの利用者のために<安定した未来>を確保できる」と述べている。
VESAエクイティは、オランダの郵便事業体ポストNLの株主でもある(2024年12月31日時点29.90%保有)。