スペイン政府は4月24日、「2025-2030年量子技術戦略(Quantum Technologies Strategy 2025-2030)」を公表した
[1]。政府による同分野への投資は2020年より積極的に実施されてきたが、単独の戦略文書としてまとめられたのは国内初。デジタルトランスフォーメーション公務省と科学イノベーション大学省が共同作成し、以下の実現を目標に、政府諸機関、地方自治体、大学・研究機関、民間企業などが官民共同で取組みを進めるとしている。政府予算は、8億8,000万EUR。EUの「欧州地域開発(European Regional Development Fund:ERDF)」とスペインの政府イニシアティブ「復興転換レジリエンス計画(Recovery, Transformation and Resilience Plan:RTRP)」を財源としており、そのほか、民間投資をあわせて総額15億EURの投資が見込まれている。
- 研究成果の知識移転の推進と市場投入を推進するための政府助成プログラム「研究、開発、イノベーション(R+D+I)」の強化
- 量子技術企業の創出と成長の促進、資本へのアクセス機会の拡大によるスペインの量子技術市場の創出
- ポスト量子暗号や新しいデジタルプライバシーなど、破壊的イノベーションへの社会対応の確立
- 確固たる国家ビジョンをけん引し、欧州内外に利益をもたらす量子エコシステムの確立
本戦略では、七つの優先的な取組み事項が設定されており、量子技術の開発のみならず、研究部門から独立して市場参入するスピンオフ企業への支援、量子技術のスタートアップへの資金供与、経済の生産性・効率性を実現する量子技術のユースケースの開発、潜在的なリスクの排除などの取組みを進める計画である。また、EUとの関係では、スペインは、従来よりEUレベルの量子技術戦略の策定に積極的に参画しているとしており、今回の戦略でもEUとの連携を十分に図りつつ国内の取組みを進める意向である。
表 量子技術戦略における優先的取組み事項
優先事項1 |
国内の量子技術企業の創出・振興 |
優先事項2 |
高度アルゴリズムの開発とAIと量子技術の融合 |
優先事項3 |
量子通信における技術基準のモデル国としてのスペインの位置づけ |
優先事項4 |
量子センシング及び量子計測における影響力の発揮 |
優先事項5 |
ポスト量子世界におけるプライバシー保護と情報の秘匿性の強靭化 |
優先事項6 |
インフラ部門・研究部門・人材部門における能力強化 |
優先事項7 |
EUにおける量子エコシステムに関するスペインの先導的地位の確立 |