2025.03
ポストノルド・デンマーク、2025年末をもって書状配達廃止を決定
デンマークの郵便事業体ポストノルド・デンマークが3月6日、2025年末で書状の配達を廃止すると発表した。
デンマークでの郵便法の改正議論が活発化したことで、2023年6月28日付改定の新しい郵便合意によって、郵便のユニバーサルサービス義務がなくなり、三つの特殊サービス(島嶼部、視覚障碍者向け郵便、国際郵便)は入札する事業者に課されることとなった。2023年秋に郵便法改正法案が可決され、2024年1月に発効となった改正では、ポストノルド・デンマークによるユニバーサル郵便サービスは廃止となっている。
これを受け、ポストノルド・デンマークは2025年末で書状の配達を廃止する。また、国内のポストも6月から順次撤去するという。
トーマス・ダニエルセン運輸大臣は、2024年11月、ポストノルド・デンマークが2025年末までに郵便市場から撤退することを知っているかとの質問に、「ポストノルドの事業戦略と処分は、公表されていない限り、会社の機密情報とみなされなければならないため、質問にあるようにポストノルド・デンマークが郵便市場から撤退すると知らされたかどうかを確認も否定もするのは適切ではないと思う」と回答しており、今回の書状配達を終了する決定は「ポストノルドの経営陣」によってなされたと指摘している。
2001年に電子政府プロジェクトを導入したデンマークでは、2011年には、2015年までに政府機関・地方自治体・公共機関からの連絡をデジタル化し、伝統的な郵便サービスの利用を完全に取りやめることを決定した。2014年11月には15歳以上のデンマーク国民には、行政機関からの書状を受け取るための電子郵便受箱を持つことが義務づけられている。
これにあわせ、ポストノルド・デンマークは、2001年に電子決済事業者ネッツと共同で電子郵便受箱「イーボクス(E-Boks)」を創設したが、当初は利用者を増やしたものの、2020年1月にデンマークのデジタル化庁が定める要件に不適合となったこと等から、売却が検討されるようになり、2025年3月、ポストノルド・デンマークの書状配達廃止の発表の数日後、「イーボクス(E-Boks)」を、デンマークの投資ファンドCataCapに売却すると発表した。
ポストノルドによると、社会のデジタル化の進展に伴い、郵便サービスへの再三のテコ入れや政府からの助成にも関わらず、同社が扱う手紙の量は2000年の14億5,000万通から、2024年には1億1,000万通まで9割以上減少した。同社は今後、荷物配送サービスに注力する。
ポストノルド・デンマークは2009年にスウェーデンの郵便事業体スウェーデン・ポストと正式合併して誕生し(2011年にポストノルドへ呼称変更)、株式の60%スウェーデン政府が、40%をデンマーク政府が保有している。
ポストノルド・デンマークの今回の発表について、自由同盟はデンマーク政府に対し、株式の全額売却を要求し、「我々は、今この機会に、国営の荷物配送会社を持つべきではないと言わなければならない」と述べた。
一方、ノルウェーでは2025年3月、郵便事業体ポステン・ブリングが、政府の郵便委員会が昨年末に発表した「郵便サービスの将来に関する報告書」に対する意見書を提出している。この中で、ポステン・ブリングは、「郵便配達員が週に1日、全住民の郵便受箱に郵便物を配達するべきだ」とし、まだ資源が存在するうちに、書状配達ネットワークの再編に合わせて、戸口配達サービスを全国的なサービスとして確立するよう提言している。