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2025.02

  • 国際
  • クラウド、ビッグデータ、電子政府
各国・地域で広がるディープシーク規制、中国政府への情報漏洩を懸念
中国の新興企業ディープシークは1月20日、低コスト高性能の大規模言語モデル「DeepSeek-R1」を搭載したスマートフォン向けAIアシスタントアプリをリリースした。アプリ調査会社Appfiguresによれば、同アプリは世界140か国でモバイルアプリのダウンロード数ランキング1位を獲得。米国AI産業の優位性が揺らぐとの警戒から、米国のAI関連株が急落するなど、衝撃が広がった。

他方で、ディープシークがユーザ情報を中国政府に提供する可能性があるという安全保障上の懸念から、各国・地域の政府機関がディープシーク製品の使用制限に踏み切る動きが相次いでいる。以下に各国・地域における国レベルでの動向をまとめる(2月17日時点)。

<欧州>
欧州でいち早く対策を講じたのはイタリアであった。同国のデータ保護当局は1月28日、個人情報の収集方法や目的、個人情報収集の法的根拠、個人情報の中国国内でのデータ保管有無等についてディープシークに情報提供を求めたが、同社の対応が不十分であったとして、同月30日にアップル、グーグル双方のアプリストアから同社アプリを削除し、調査を開始することを発表した。これに追随するように、アイルランド、クロアチア、フランスがディープシークに情報提供を要請したほか、ベルギー、英国、オランダでも調査が開始された。オランダ政府は公務員によるディープシークアプリの使用も禁止した。なお、ロイター報道によると、EU加盟各国のデータ保護当局等で構成される欧州データ保護会議(EDPB)は2月11日に開催された会議でディープシーク問題について議論したという。EDPBはディープシークへの規制を強化する国が増える見通しを明らかにしており、各国が協調行動を取るための即応チームを設置する方針である。

<アジア太平洋>
アジア太平洋地域では台湾がディープシーク対応で先んじた。台湾デジタル発展省は1月31日、公的機関に対しディープシーク製品の使用制限を勧告したが、その後規制を強化し、行政院(内閣に相当)が2月3日に公的機関での使用を禁止した。このほか、オーストラリアが同月4日に政府公用端末でのディープシーク製品の使用を禁止したほか、韓国では同月6日に複数省庁と警察が公用端末とDeepSeek-R1の接続を遮断し、同月15日には同国内でのディープシーク製品の新規ダウンロードを停止した。なお、ロイター報道によれば、インド財務省も1月29日に公用端末でのAIツール使用を回避するよう勧告したが、ディープシーク製品に限らず、米国のオープンAI製品を含むすべてのAIツールが回避対象とされたという。

<北米>
米国では、国家安全保障会議がディープシークの安全保障面での影響について調査を実施しているほか、国防総省・軍や航空宇宙局(NASA)がディープシーク製品の使用を制限している。また、2月6日には政府公用端末でのディープシーク製品の使用を禁止する超党派法案が連邦議会下院に提出された。一方、カナダでは、連邦政府全体のICTシステムを所掌する共有サービス庁が管理する公用端末でのディープシーク製品の使用が禁止されており、内閣は他省庁の公用端末にも同様の措置を導入するよう推奨している。

こうした国際的な規制議論に対し、中国外交部は2月6日の定例記者会見で「中国政府は企業や個人に対し違法な方法でデータを収集・保存することを要求したことはなく、今後も要求することはない」と説明。そのうえで「科学技術を政治問題化することに一貫して反対する」と述べた。