2025.01
トランプ大統領、バイデンAI大統領命令等を撤回しAIにおける米国優位性を維持・強化する新たな大統領命令に署名
2025年1月20日、就任式を終えたドナルド・トランプ大統領は、前政権で発行された78件の大統領命令を撤回する大統領命令に署名、その中には、2023年10月の「安心・安全・信頼できるAIの開発及び利用」に関する大統領命令(第14110号)も含まれる。そのうえで、トランプ大統領は1月23日、バイデン政権のAI政策を撤廃し、米国のAI世界支配を強化する大統領命令に署名した。
これは「米国のAIイノベーションに対する障壁除去」に関する命令で、AIにおける米国の優位性を維持し強化するという米国のコミットメントを確立するものとなる。
ホワイトハウスは、本命令に伴って公表されたファクトシートで、米国のAIシステム開発は、イデオロギー的な偏向や作為的な社会的意図から自由でなければならず、政府の適切な政策により、米国はAIにおけるリーダーとしての地位を確固たるものとし、すべての米国民にとって明るい未来を確保することができるとしている。
このため、今回の命令は、科学技術担当大統領補佐官(マイケル・クラチオスが指名)、ホワイトハウスのAI・暗号資産特別顧問(ディビッド・サックス)、国家安全保障担当大統領補佐官(マイケル・ウォルツ)が中心となり、米国のAIの優位性を維持・強化する「AI行動計画」を180日以内に開発するよう指示している。
その一方で、ホワイトハウスのファクトシートは、2023年のバイデンAI大統領命令はAIを開発・展開する企業に不必要に負担のかかる要件を設け、民間のイノベーションを阻害し、米国の技術的リーダーシップを脅かすものと位置付け。新たな命令は、各省庁に対して、2023年大統領命令の下で実施された既存のAIポリシーを検証し、AIにおける米国のリーダーシップ強化と矛盾するあらゆる政策、指令、規制、命令、その他の行動を修正又は撤回するよう求めている。
さらに、本命令は、米国のAIリーダーシップに対する有害な障壁が確実に取り除かれるよう、連邦政府によるAI調達とガバナンスに関する各省庁への行政管理予算局(OMB)指令を改訂・再発行するよう命じている。
トランプ大統領は、同日、大統領科学技術諮問委員会(Presidenst’s Council of Advisors on Science and Technology:PCAST)再承認も公表しており、この中で、米国AIイニシアチブや国家量子イニシアチブを含む重要技術でイノベーションを後押しする国家イニシアチブの開始を指示しており、そこでは研究、戦略的投資、人材開発を優先するよう求めている。
こうした政権の動きに呼応するように民間企業の取組みも活発となっており、トランプ大統領は、2025年1月21日、OpenAI、Oracle、Softbankによる合弁事業Stargateプロジェクトを公表した。Stargateは、初期投資1,000億ドル、今後4年間で5,000億ドルを投資してAIデータセンター等を構築する計画で、雇用10万人を見込んでいる。テックパートナーには、Nvidia、Arm、Microsoft等の名前も挙げられている。
この他にも、大手テクノロジー企業によるAIインフラ構築への投資意欲は高まっており、Microsoftは2025会計年度に800億ドルを投資する計画、Amazonは2025年に2024年の750億ドルを上回る投資を計画しており、Metaは2025年のAI設備投資を2024年の400億ドルから最大650億ドルに増加することを明らかにしている。