2024.12
トランプ前大統領再選により変化見込まれるFCCの政策等
2024年11月5日、米国大統領選挙の投票が行われ、共和党候補だったドナルド・トランプ前大統領が早々に当選を確実とした。激戦7州と言われた州のすべてで勝利を収め、得票数でも民主党候補のカマラ・ハリス副大統領を上回る圧勝となった。
同日に行われた連邦議会選挙でも、共和党は上院で過半数を奪還、下院でも引き続き過半数を維持する見込みとなっており、トランプ次期大統領は、ホワイトハウス、上院、下院のすべてを共和党が占める、いわゆる「トリプルレッド」という状態で2025年1月20日の大統領就任式を迎えることとなる。
2025年1月3日に召集される次期議会で上院共和党院内総務を務めることとなるジョン・スーン議員は、重要法案の採決で不可欠な60票という数字を維持する意向を示しているが、上院と下院で共和党が過半数を占めることは議会運営でも利点となる。
そうした状況を控え、トランプ次期大統領は次々と政権メンバーの指名意向を明らかにしており、選挙期間中から唱えていた移民政策をはじめ、エネルギー政策、環境対策、通商政策等が見直される機運が高まっている。
2024年11月17日にはFCC委員長として現在FCC委員を務めるブレンダン・カー氏を指名する意向を明らかにしており、FCCでもさまざまな政策転換が見込まれる。
カー委員は、2012年からFCCに在籍しており、同じく共和党のアジト・パイ委員長(当時)の下では法務顧問を務め、2017年から委員を務めている。
また、保守系シンクタンクHeritage Foundationが設立し、新政権下で保守政策推進を掲げる団体「Project 2025」でも、カー委員はFCCの章を執筆しており、市民団体や消費者団体等から批判を受けていた。
ここでは、カー委員は、FCCの役目としていくつかの優先事項を挙げており、その中には、通信品位法第230条の運用見直しや法改正を通じて、大手テクノロジー企業が運営するプラットフォーム上で第三者が投稿するコンテンツの法的責任を問われないという免責特権を縮小する方針も含まれる。
カー委員は、2024年11月14日には、Alphabet、Meta Platforms、Microsoft、Appleという大手テクノロジー企業CEOに対して書簡を送付し、言論の自由と視点の多様性の観点から、監視社会、検閲カルテルの一部を成すとされるメディア企業「NewsGuard」との関係性について質問し、12月10日までに回答するよう求めている。
その他、Project 2025では、国家安全保障の強化に係るFCCの権限の適切な遂行、経済繁栄のための周波数パイプラインの再構築や官民での周波数共用調整の促進、宇宙政策の推進といった事項に加えて、ブロードバンド支援での浪費見直し、さらなる競争促進に向けた規制緩和などが記載されている。
国家安全保障の観点では、トランプ次期大統領は最近、TikTok禁止を妨げる意向を示したことで、一部議員から懸念が示されていた。TikTokは現在、法律で事業売却又は米国からの撤退が求められている。
加えて、トランプ第二期政権では、後半の選挙戦を支えたイーロン・マスク氏が政府効率化省の共同トップに就任するとされている。マスク氏は、TeslaやSpaceXを立ち上げており、米国の電気自動車や自動運転に関する政策の規制緩和や、低地球軌道(LEO)衛星打ち上げにかかる規制の緩和やブロードバンド提供が加速される可能性もある。
また、トランプ次期大統領は、バイデン大統領が昨年署名したAIに関する大統領命令を撤回する意向も明らかにしており、その動静も注目される。