スペイン政府は2024年10月23日、戦略産業のデータを企業間で共有する「データスペース」の構築プロジェクトの実施計画を公表した
[1]。政府デジタル戦略「スペインデジタルアジェンダ2026」で規定された戦略産業において製品・技術、研究開発、インフラ運用などに従事する企業がそれぞれ保有するデータを、単一のデータプラットフォームに集積することなく、それぞれのデータ主権を維持しつつ相互にデータを利用する分散型データ共有システムを構築し、各産業の生産性・競争力・事業効率性の向上を図るというもの。
戦略産業では、特に医療、アグリフード、持続可能なモビリティ分野が重視されており、各産業のデータスペースにより、以下の実現を図るとしている。
- 医療:診察データの医療機関間での共有、AIを活用した診断の改善・疾患の早期発見
- アグリフード:IoTセンサー・航空写真のデータ、農業関連企業データ、気象予報企業のデータの統合による農作物の育成・収穫管理の効率化
- 持続可能なモビリティ:公共交通機関と民間交通企業のデータ共有による、交通路の最適化、交通需給バランスの確保、収益性の拡大、市民サービス改善
計画では、全90プロジェクトに対し総額8,300万EURの助成金を供与し、事業者間のデータ共有技術・サービスの開発、技術標準化、データ共有ルール・リファレンスモデルの策定、運用体制の整備などを図る。(図表参照)
図表 産業別助成件数・金額
分野 |
助成プロジェクト数 |
金額 |
医療 |
21 |
32,944,886 |
アグリフード |
21 |
14,997,757 |
持続可能なモビリティ |
19 |
17,437,258 |
製造業 |
10 |
5,461,322 |
その他産業 |
9 |
6,398,637 |
社会・ケア経済 |
7 |
3,639,017 |
商業 |
3 |
2,166,547 |
合計 |
90 |
83,045,424 |
また、政府は11月21日に、データスペースの構築に関する2024年-2026年計画を公表した
[2]。データスペースの対象を上記戦略産業以外にも拡大し、ユースケース開発、データスペース運用技術・サービスの開発、データスペースの推進・監督役を果たすデモンストレータの設置などを図る。総額5億EURを投じ、1)戦略産業のユースケースの開発、2)観光分野のユースケースの開発、3)データスペース接続支援キット、4)データスペースの技術製品・サービスの開発、5)公共データへの需要管理、6)データスペースを推進するデモンストレータの設置、7)観光データススペースのプラットフォームの構築、8)スペイン語・公用語のデジタル化など言語分野のデータスペースの構築、9)スマート都市インフラ分野のデータスペースの構築、10)地域開発分野のデータスペースの構築、11)プロモーション・啓発・訓練の実施、12)レファレンスセンターの開設に関する資金支援・技術支援を実施する。