閣僚理事会(Council of Ministers)は5月15日、AI開発・普及を推進するため「AI戦略2024」を採択した
[1]。AI技術の開発・普及は、スペイン政府が進めるデジタル政策の重点項目の一つであり、国家デジタル戦略「スペイン・デジタル2026」において、1)AI規制・倫理枠組み、2)AI研究開発、3)国内・国際のAI人材の確保、4)AIのバリューチェーンへの統合に関する施策を展開し、スペイン語と地方州の公用語をベースにした独自の言語モデルの構築や2023年にはEU加盟国では初のAI専担の監督機関「AI監督庁(AESIA)」を設置するなど、独自のAI政策を積極的に推進してきた
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「AI戦略2024」は、これらの取組み成果を踏まえ、2024~2025年間に展開する政府の取組みを示したもの。1)AI開発能力の強化、2)官民へのAI普及、3)AIの倫理性の確保を柱に、国内スーパーコンピュータ「MareNostrum5」の活用やAIの普及促進プログラムの実施などを盛り込み、AI開発・普及を加速化するとしている。予算は、15億EURが予定されている。
2024年AI戦略の概要
①AI開発能力の 強化 |
- スーパーコンピュータ「MareNostrum5」のパフォーマンスの向上と民間部門の利用機会の拡大
- 大容量データ処理センター(DPC)の新設
- スペイン語・公用語(カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語、バレンシア語)の言語モデル(ALIA)の構築(20%以上のコーパスの達成)
- AI人材確保のためのAI技術開発プロジェクトのネットワーク化、大学・企業内育成プログラムの展開
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②官民へのAI導入の加速化 |
- 政府機関におけるAI活用促進プロジェクトGobTech Labの実施
- 民間部門におけるAI活用を支援するKitコンサルティングプログラムの実施
- AI開発会社への融資プログラムの実施
- AIサイバーセキュリティビジネスの育成
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③AIにおける透明性・倫理性・社会的責任の確保 |
- 監視機関AESIAの所管業務の拡大
- AI分析(傾向分析・社会的議論・善良な取組事例・発生リスクなど)
- 責任あるAI監視(EUのAI規制の順守、オープンモデルの構築など)
- 国際ベンチマーク(EU内外のAIガバナンス機関との協同)
- AI倫理関する国際的な意見交換・情報共有機会の拡大
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出所:Artificial Intelligence Strategy 2024
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