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2024.05

  • アメリカ
  • ブロードバンド・ICT基盤整備
FCCネット中立性規則復活、5Gネットワークスライシングの判断は今回見送り
2024年4月25日、FCCは、公正かつオープンなインターネット保護、競争とイノベーション奨励、国家安全保障の保護、そして、公共安全にとっても重要な要素となる、「ネットワーク中立性規則」を復活させる決定を含む一連の文書を賛成3票、反対2票で採択、5月7日にその全文を公表した。ネット中立性規則が復活するのは、2017年に共和党政権下のFCCが同規則を廃止する決定を採択して以来、およそ6年ぶりとなる。
 
今回の決定は、2017年に廃止が決定された、民主党政権下で採択された2015年決定を概ね踏襲する内容となっており、共和党FCC委員が反対票を投じており、政権交代で共和党が政権を握る場合は再度覆される可能性がある。また、業界側も既に同決定に対して訴訟を提起する意向を示しており、このまま規則が施行され、FCCの権限が継続するかどうかは不透明な状況となっている。
 
FCCは今回、ブロードバンドインターネットアクセスサービス(Broadband Internet Access Service:BIAS)を、より緩やかな規制に服する通信法第I編の「情報サービス」から、同法第II編で規定される「電気通信サービス」に分類を変更し、より厳しい規制を課すための権限を回復する。
 
そのうえで、BIASが消費者にとって必要不可欠なエッセンシャルサービスとして扱われることを確保するため、全国的な統一基準となる規則を再構築する。これにより、FCCは、インターネットの開放性に有害な行為から消費者を保護する、消費者プライバシーやデータセキュリティを保護する、国家安全保障や法執行への脅威から通信ネットワークや重要インフラを保護する、公共安全機関のニーズを満たし、通信ネットワークのレジリエンシと信頼性を確保する等、公共の利益を保護、促進するというFCCの責任を前進させる。
 
また、今回確立する連邦規制枠組みを妨害する又は相容れない州や地方による立法措置等に関しては、FCCの規制が優先することを明確化しており、そうした事例は個別に判断するとしている。
 
他方、FCCは、ブロードバンドへの投資やイノベーションを引き続き促進するため、今回の決定の趣旨や目的には合致しない規制は適用しないという手法を採用、ブロードバンド事業者への料金規制やタリフ作成・公表義務、ラストマイル設備のアンバンドリング義務といった不必要な規制の適用を差し控える。
 
FCCがブロードバンド事業者を効果的に監督するための主な規制は次のとおり。
 
 (1)オープンインターネット保護
 
ブロードバンド事業者による合法的なコンテンツのブロック禁止、スロットリング禁止、有償優遇措置禁止を規則化する。
 
また、2015年決定で業界が強く反対していた、不当な干渉や不利益を禁止するための一般行為規制も復活させ、インターネットの開放性に害をもたらす新たな慣行を禁止するかどうかをケースバイケースで判断する。
 
この文脈では、5Gネットワークスライシングをこれら規則の対象にするかどうかが議論となり、移動通信事業界はネットワークスライシングが非BIAS又はオープンインターネット規則で言う合理的なネットワーク管理慣行に該当すると主張し、通信法第II編下での規制を適用することに反対していた。他方、市民団体等は、ネットワークスライシングを非BIASとして認めることは一般的なインターネットに悪影響を及ぼすとして、非BIASとして扱うことに反対していた。FCCは、最終的に、現時点ではネットワークスライシング又はネットワークスライシングを通じて提供されるサービスを、本質的にBIAS又は非BIASデータサービスのいずれかに分類すること、あるいは、ネットワークスライシング又はネットワークスライシングを通じて提供されるサービスの特定の使用が、オープンインターネット規則の下で合理的なネットワーク管理慣行としてみなされるかどうかについて見解を述べることを否定した。ユースケースは依然開発中で、技術もまだ導入途上にあるとして、今は分類の判断を下す適切な時期ではないと結論付け、移動通信事業者は当面、ネットワークスライシングの特定の利用がBIASの定義に該当するかどうかを評価し、該当する場合はネットワークスライシングの利用が今回復活させた一般行為規則と整合していることを確認する必要があるとしている。FCCは市場におけるかかる利用の状況を注意深く監視し、必要な場合には、有害なネットワークスライシングの利用に対処する措置を講じるとしている。
 
FCCは、さらに、2017年規則で廃止された、透明性を強化するための規則も復活させている。
 
(2)国家安全保障保護
 
FCCは、また、2015年規則とは異なり、今回は、通信法第214条に基づく国内・国際市場参入規則をBIASにも適用する判断を下しており、国家安全保障に脅威をもたらす外国所有事業者が米国内でブロードバンドネットワークを運営する認可を取り消す権限を持つことを明確化した。FCCは、これにより、音声サービスを提供する第214条認可を受けていない事業者は、米国内での固定/移動ブロードバンドサービスの運営を停止しなければならないとしている。
 
(3)公共安全確保
 
公共安全機関やファーストレスポンダーはその活動の一環でますますBIASに依存するようになっており、また、市民も公共安全目的でのBIAS利用が拡大している状況に鑑み、FCCは、BIASへの強力な権限を確保することは緊急警報や911緊急通報の改善、消費者保護、障がい者によるアクセス確保といった公共安全通信の保護を強化すると判断。また、ブロードバンド事業者にインターネットサービス障害の報告を義務付けることで、重要インフラのレジリエンシと信頼性を強化できるとしている。
 
その他、FCCは、4月29日、連邦取引委員会と消費者保護に関する覚書(Memorandum of Understanding:MOU)に署名した。これは、FCCによるBIAS規制権限の復活を受けてのもので、FCCは通信法に基づき、また、FTCは不公平な競争手法や不公平又は欺瞞的な行為及び慣行を取り締まる権限に基づいて、互いに連携して消費者保護に向けた法執行活動を行っていく姿勢を明らかにしている。