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2022.09

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注目集まる低地球軌道(LEO)衛星から携帯端末への直接サービス提供
米国では最近、ソフトウェアやハードウェアの変更をしない通常の携帯電話端末に対して、低地球軌道(LEO)衛星コンステレーションから直接サービスを提供する取組みやその進捗に関する発表が相次いでおり、業界の注目を集めている。

(1)T-MobileとSpaceXによる次世代Starlink衛星から携帯端末への直接メッセージング・サービス提供

2022年8月25日、T-Mobileマイク・シーバートCEOとSpaceXイーロン・マスクCEOは、携帯電話がつながらない地帯、いわゆる「mobile dead zone」を消滅させるという共通のビジョンの下、宇宙空間から直接、通常の携帯電話に対して通信を提供するという野心的な取組み「Coverage Abobe & Beyond」を発表。

米国の国土面積は380万平方マイル、T-Mobileによると、そのうち20%近くとなる50万平方マイル以上の国土や海洋上では地上系モバイルネットワークが存在しない。

SpaceXは、第2世代(Gen. 2)Starlink衛星により強力なフェーズドアレイアンテナを搭載することで、時速1万7000マイル程度の速度で周回するLEO衛星コンステレーションから、T-Mobileが所有するミッドバンドの1.9GHz PCS帯を使って通常の携帯電話端末に対して直接サービスを提供する。

マスク氏によると、このアンテナは展開されると5メートル四方、25平方メートルほどの大きさとなり、セルゾーン当たり2-4Mbpsの通信速度が見込まれるという。

第2世代Starlink衛星は、2023年の打ち上げが予定されるStarshipロケットに搭載される見込みで、2023年後半にはベータテストを開始し、SMS/MMSや一部メッセージングアプリによるテキスト通信をT-Mobile加入者に提供、最も人気が高いプランでは無料でサービスを利用できる。

同サービスでは、ユーザーの周辺に基地局が存在しない場合に衛星との接続を試み、衛星はソフトウェアによって仮想の地上基地局のように動作するとしており、将来的にはデータや音声通信も提供することも計画しているという。

(2)AppleとGlobalstarによるiPhone 14端末向け衛星からの緊急SOS機能提供

2022年9月7日、Appleは、最新となるiPhone 14シリーズを発表。さまざまな新機能が盛り込まれる中、衛星通信については、GlobalstarのLEO衛星コンステレーションと、同社がFCCから認可を受ける2.4GHz帯Sバンド(Band 53/n53)での衛星及び地上運用業務を利用して、同端末を利用するユーザー向けに衛星から直接、緊急SOS機能を米国及びカナダで2022年第4四半期に提供開始することを明らかにした。

この機能は、緊急時の利用のみを想定しており、2年間無料で提供される。

両社の協業は2019年から水面下で続けられており、これまで既に、①フィージビリティフェーズ、②冗長性とカバレッジを強化するためのGlobalstarの地上ネットワークの重要なアップグレード、③世界10か所に新たなゲートウェイの建設、④地上予備衛星の打ち上げ成功、⑤厳しい現場システムテスト、といった作業マイルストーンを完了している。

本サービス提供のため、Globalstarは、Appleに対して、現在及び将来のネットワーク容量の85%を割り当て、必要な人員やソフトウェア、衛星、ゲートウェイ、衛星周波数、規制上の権利を含むすべてのリソースを提供、維持するほか、Appleに対して本サービスを優先的に提供し、認可を受けた衛星周波数を含むGlobalstarが所有する必要なリソースへの優先的なアクセス提供にも合意している。

Appleは、その対価として、Globalstarに対して、定期的なサービス料金やサービス関連の事業運営経費(OPEX)と資本支出(CAPEX)の一部支払い、免許交付やサービス及び関連基準の達成に応じた潜在的なボーナス支払いなどの料金を支払う。

加えて、Appleは、Globalstarが2026年に運用開始を計画する新衛星に関連する資本支出の95%を負担すること等にも同意しており、Globalstarの総収入は、このAppleとの契約に基づく収入増加を受け、2026年まで大幅に改善を続け、2023年予想と比較して約35%増加すると予想している。

(3)Lynk Global及びAST SpaceMobileの取組み

衛星から携帯端末に直接サービスを提供する取組みは、新興企業のLynk GlobalやAST SpaceMobile等も進めており、Lynkは、2022年9月16日、衛星と標準的な携帯電話を直接接続するサービスを提供するための世界初となる商業免許(特別一時権限(Special Temporary Authority:STA)をFCCから取得したことを発表。これにより、同社は年内に自社衛星コンステレーションを使った商用サービスを開始することが可能になった。今回運用が認められたのは、Lynkが既に契約を締結したモバイルネットワーク事業者(MNO)が使用するUHF帯でのテキストメッセージのみで、各国での認可が別途必要となるほか、米国市場での運用は含まれない。

また、日本の楽天や英国Vodafoneからも出資を受けるASTは、2022年9月10日、携帯電話端末と直接通信できる大型試験衛星「BlueWalker 3(BW3)」の打ち上げ成功を発表。BW3は、過去最大規模となる693平方フィート(64平方メートル)の巨大なフェーズドアレイ・アンテナを搭載し、LEO衛星から3GPP標準ベースのセルラー・ブロードバンド・ネットワークを構築し、通常の携帯電話端末向けにサービスを提供する。ASTは、BW3をテストする実験局免許を既にFCCから取得しており、Vodafone、楽天モバイル、OrangeなどのMNOや機器プロバイダと協力し、世界6大陸でこの試験を行い、2023年中の商用サービス提供を目指している。