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2020.06

  • EU
  • セキュリティ、プライバシー
EUで進むオンライン・ヘイトスピーチ規制議論
欧州委員会は2016年に「オンライン上の違法ヘイトスピーチに対抗する行動規範(Code of Conduct on countering illegal hate speech online)」を策定するなど、長年に亘ってオンライン・ヘイトスピーチ対策に取り組んできた。2020年6月3日には汎EU法である「デジタルサービス法(Digital Service Act)」の公開協議を開始し、オンライン・プラットフォーム規制の在り方についての議論を開始している。

EU加盟国レベルでのオンライン・ヘイトスピーチの取締まり規制は様々だが、先導的な立場に立ってきたのはドイツである。同国は2018年1月に、国内ユーザ数が200万人以上のプラットフォーム事業者に違法コンテンツを24時間以内に削除することを義務付ける法律を世界で初めて導入。この法律は「ネットワーク施行法(通称NetzDZ法)」と名付けられ、違反した場合の罰金は最大5,000万ユーロ(約60億円)に上る。2020年に入ってからは同法の幅広い改正が並行して進行中で、6月18日にはその一環として、右翼過激主義と憎悪犯罪に対抗することを目的とした「CDU/CSU 及びSPD 法」が採択された。同法は、違法コンテンツに関する報告を受けたプラットフォーム事業者に、報告を受けた時点で当該コンテンツを連邦刑事庁に直接届けることを義務付けるもので、NetzDZ法を厳格化した形となる。

一方、フランスでは国民議会(下院)が2020年5月14日に「インターネット上のヘイトスピーチ対策法(通称Avia法)」を承認した。同法は、プラットフォーム事業者に対し、ネット上に投稿されたヘイトスピーチや侮蔑表現を24時間以内に削除するよう義務付けるもの。違反企業には最大125万ユーロ (約1億5,000万円) の罰金が科され、悪質な場合には当該企業の全世界における年間収益の4%が罰金上限となる可能性もある。しかし、その後、保守野党の共和党上院議員団が同法の違憲審査を請求。最終的に、フランスの憲法裁判所にあたる憲法院は6月18日、24時間以内の削除義務が表現及び言論の自由を侵害するとして、Avia法の主要部分に違憲性があるとの判断を下した。憲法院は、プラットフォーム事業者が罰金を逃れるために過剰反応し、問題のないコンテンツまで削除されるリスクがあるとして、一連の関連条項の削除を命じている。

オンライン・ヘイトスピーチ規制は、言論の自由の確保やオンライン・コンテンツの拡散スピードの速さ等、考慮すべき点が多く、EU内でも温度差があるが、「デジタルサービス法」においてオンライン・プラットフォームに関する責任と最新規則が明確化されれば、議論の整理が進むことが期待される。欧州委員会は2020年内に同法案を正式に提出する考えである。