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2020.06

  • EU
  • ブロードバンド・ICT基盤整備
汎欧州型データインフラ構築プロジェクトGAIA-Xが正式発足
2019年10月にドイツ主導で立ち上げられ、フランスとともに準備が進められてきた汎欧州型データインフラ構築プロジェクトGAIA-Xの正式発足が、2020年6月4日、ドイツのペーター・アルトマイヤー(Peter Altmaier)連邦経済エネルギー大臣とフランスのブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)経済財務大臣により発表された。推進母体として「GAIA-Xファウンデーション」がブリュッセルに設立され、BMW、ドイツテレコム、シーメンス、Atos、SAP、Boschなどのドイツ企業11社にフランス企業11社を加えた計22社が同プロジェクトに参加する。

GAIA-Xの背景には、クラウドコンピューティングやデジタルプラットフォームビジネス分野で米国や中国の後塵を拝しているとの欧州の危機感がある。デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、ビッグデータをベースにしたビジネスが主流になることが見込まれるが、欧州では「データインフラは、少数の非欧州企業に牛耳られている」1状況にあり、欧州で生成されたデータであっても、米国GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のメガプラットフォームに集積・解析され、それら巨大企業の新たなビジネスに利用されるだけで、欧州自体のデジタル経済の拡大に結び付いていないことが懸念となっている。このため、欧州がデジタル経済における巻き返しを図るには、データシステムの構築と蓄積・処理されるデータの管理を、非欧州企業に依存せず、欧州の自己決定により実行できる技術環境の整備が必要と考えられ、「デジタル主権」(Digital sovereignty)の確立を最大の目標に、欧州独自のデータインフラを構築するGAIA-Xプロジェクトが推進されることとなった

GAIA-Xを通じ、欧州全体での価値の創出(European value creation)が目指されるが、GAFAと競合するプラットフォームを構築するのではなく、欧州域内に存在する各種通信インフラ、クラウド設備、産業・個人データ、デジタルプラットフォームを統合するデータインフラ(Federated data infrastructure)が構築される。現在、そのためのアーキテクチャが検討されており、基本モデルは、①各産業部門から生成されるデータの相互運用やポータビリティを実現する「データエコシステム」(Data Ecosystem)レイヤー、②クラウド、高パフォーマンスコンピューティング(HPC)、クラウド、エッジコンピューティングの相互運用を実現する「インフラエコシステム」(Infrastructure Ecosystem)レイヤー、③データインフラを利用する際のセキュリティ、データ主権を維持したデータ交換、データ利用カタログ、個人データ保護に関する共通ルールや標準を定める「フェデレーションサービス」(Federation Services)レイヤーで構成される2

ロードマップによれば、2021年初頭までにプロトタイプを構築し、運用を開始する予定である3。ユースケースとして、インダストリー4.0、スマートリビング、金融、公共部門、移動・交通、農業が挙げられており4、GAIA-Xにより各分野のデータを活用した新たなビジネスモデルの構築のための技術基盤の整備が進むことが期待されている。

1 BMWi, GAIA-X: A Pitch Towards Europe(https://www.bmwi.de/Redaktion/EN/Publikationen/gaia-x-a-pitch-towards-europe.pdf?__blob=publicationFile&v=5
2 BMWi, GAIA-X: Driver of digital innovation in Europe(https://www.bmwi.de/Redaktion/EN/Publikationen/gaia-x-driver-of-digital-innovation-in-europe.pdf?__blob=publicationFile&v=8
3 同上
4 https://www.data-infrastructure.eu/GAIAX/Navigation/EN/Home/home.html