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2020.05

  • アメリカ
  • セキュリティ、プライバシー
米国における新型コロナウイルス接触追跡アプリへの取り組み
米国における接触追跡アプリについては、まず、研究機関等の独自のアプリから始まった。

例えば、2020年4月にはマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、スマートフォンを通じて、位置データを収集せず追跡するように設計されたBluetoothを使用したPACTと呼ばれる技術を用いて、新型コロナウイルス感染者の行動を追跡するプロジェクトを開始した1。このプロジェクトでは、感染の有無にかかわらずアプリを自主的に導入するよう要請している。このプロジェクトで収集されたデータはプライバシーを保護する加工がなされ、個人が特定できないような形で用いられる。

次いで、公的機関の対応としては、州独自のアプリがリリースされている。ノースダコタ州2、ユタ州3、ジョージア州4、ロードアイランド州5などが新型コロナウイルスの感染状況を把握するためのアプリを独自開発している。しかし、技術的な問題やデータ入手の困難さ、プライバシーへの懸念などのために開発はなかなか進んでいない。また、州の接触追跡アプリが、感染状況を正確に把握できるほどの利用者を集められるのかどうかも疑問視されるところ。

アップルとグーグルは、5月20日、新型コロナウイルス対策として共同開発を進めていた接触追跡技術の提供を開始した6。しかし、これを使って政府が効力のある接触追跡アプリを作れるかどうかは未知数である。両社が「Exposure Notification(曝露通知)」と呼ぶイニシアティブにより、州や連邦政府は、Bluetoothを使うアプリを開発し、感染者の濃厚接触者に通知することが可能となる。両社は、22か国及び米国内のいくつかの州がこの技術の使用を計画しているとする。アラバマ、ノースダコタ、サウスカロライナ各州は、それぞれアップル・グーグルの新技術を採用する方針を表明済みである。

信頼できる接触追跡アプリは、経済活動の再開を支援すると考えられているが、その効果を発揮するためには、ある程度以上の利用者を確保することが条件となる。アップルとグーグルは、プライバシー保護を理由に、公衆衛生当局が感染者問診に必要と主張するデータの一部の提供を拒否している。このため、米国でどれだけの州が両社技術を採用するかは分からず、その数次第では、接触追跡の効果が十分発揮されないこともあり得る。一方で、州が独自に接触追跡アプリを開発するのは、技術面、資金面からも障壁が高く、こちらも利用者数をどれだけ確保できるかは不明である。

アップル、グーグルの技術は、両社のOSを採用するスマートフォンが市場の大半を占めるという利点があるとはいえ、果たして大手テクノロジー企業を信頼する一般市民がどれだけいるかが問われることになる。

1 http://news.mit.edu/2020/bluetooth-covid-19-contact-tracing-0409
2 https://ndresponse.gov/covid-19-resources/care19
3 https://coronavirus.utah.gov/healthy-together-app/
4 https://dph.georgia.gov/contact-tracing
5 https://www.ri.gov/press/view/38369
6 https://developer.apple.com/documentation/exposurenotification/building_an_app_to_notify_users_of_covid-19_exposure
https://blog.google/inside-google/company-announcements/apple-google-exposure-notification-api-launches/