2019年12月に発足した新しい欧州委員会が、2020年1月29日、施策パッケージWork Programme 2020を採択した
1。フォン・デア・ライエン新委員長が2024年までの政策方針をまとめた「政治的ガイドライン」（Political Guidelines）
2を踏まえて、2020年に実施予定の具体的な施策を示したものであり、情報通信分野においても、多くの施策が進められる予定である。
（１）Work Programme 2020における施策事項
欧州委員会は、環境対策とデジタル化を政策上の2本柱に据えて、欧州の経済・社会の転換を進めるとしており、「政治的ガイドライン」では、そのために優先的に取り組むべき政策事項として、以下の6項目を挙げている。
①欧州グリーンディール（A European Green Deal）
気候変動に炭素排出が影響しない炭素中立性（carbon neutrality）の実現を目指す。そのための立法措置を2050年までに実施する。
②デジタル時代に適合した欧州（A Europe fit for the digital age）
デジタル経済における非個人データ活用のための戦略の策定、欧州の価値基準と基本的権利を尊重するAI導入、欧州レベルの産業イノベーション、デジタルサービス法の制定。
③人々のために役立つ経済
欧州独自の社会市場経済へのデジタル技術および気候変動対策の統合。
④世界におけるより強い欧州（A stronger Europe in the world）
アフリカ、西バルカン諸国との協力するための新たな戦略の策定。北マケドニア及びアルバニアとの加盟交渉の実施。
⑤欧州的生き方の推進（Promoting our European way of life）
移民・難民問題や庇護に関する新たな協定の提案、ヘルスケアへの支援、デジタル技術・環境技術のスキル習得への支援、安全保障・サイバーセキュリティの強化。
⑥欧州の民主主義のさらなる促進（A new push for European democracy）
市民参加型「欧州の未来のための会議」の設置、人口変動が与える雇用、社会保護、公共医療、地域政策、デジタル接続、技術継承への影響の調査と、高齢者社会の対策の策定。
（２）Work Programme 2020における情報通信分野の施策事項
Work Programme 2020において示された施策は、「政治的ガイドライン」で挙げられた6項目に分類されており、情報通信分野は、「デジタル時代に適合した欧州」の項目において扱われている。
情報通信関連の施策としては、「データ戦略」や「人工知能（AI）白書」の策定のほか、法制面ではデジタルサービス法の制定に向けた取り組み、セキュリティ関連指令の見直しなどが進められる。産業面では、産業戦略や中小企業のデジタル化に向けた戦略の策定が進められる。デジタル経済の成長に伴いプラットフォーム型ビジネスへの従事者の増加が見込まれ、雇用・労働条件に関する政策的検討も進められる。
2020年における取組み事項と施策の実施時期は以下のとおりである。
出所：Work Programme 2020 ANNEX （
https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/cwp-2020-annex-1_en.pdf）
1 COM(2020) 37 final, Commission Work Programme 2020 - A Union that strives for more (29.1.2020)（
https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/cwp-2020_en.pdf）
2 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_124